「晴香せんぱぁああぁい!!!」

「なんだよぃ赤也、うるせぇな」

「もう嫌っす俺!!」

「どうしたんじゃ」

「…うるさいのがまた増えた」



教材室からやっとの想いで戻ってくると、そこにはやはりしつこくてうるさい丸井君と仁王君が待っていた。2人の絡みをことごとく無視して作業を進める事数十分後、今度は切原君の登場だ。何でこうもうるさいのばかりが揃うのか、不思議でならない。しかも半泣きだし面倒臭いしもう嫌だ。



「副ブチョがいちいち作業の進み具合チェックしに来るんすよ!部活展示の!」

「それほどおまんが心配なんじゃろ」

「もう鬱陶しくてしゃーないんっす、何とかして下さい!」

「なのに抜け出して来て大丈夫なのか」

「今は自分の教室展示の方に戻ったっす…あーもう嫌だー!!」



そう言うと切原君は正面から思いきり抱きついて来て、此処にいたいっす!、と駄々をこね始めた。…厄介だが、確かに同情はする。真田君の事だ、切原君がする事全てに口出しをしているのだろう。容易にその光景が思い浮かぶのが更に心苦しい。だから私は仕方なく、溜息を吐きながら彼の背中を軽く叩いた。現部長が元副部長に敵う日は、まだまだ来なさそうだ。



「赤也!やはり此処におったか!!」

「来たぁあぁああ!!」

「真田ー、少しは放置してやれよぃ。もう部長は赤也なんだしよー」

「まだ任せきれんからこうして面倒を見てるのだ!」

「何処のお父さんじゃ。あんまり厳しくすると子供はふてるぜよ」



丸井君と仁王君も流石に同情したのか、それぞれ切原君の頭を撫でながら彼を庇う。私から真田君の姿は切原君で隠れてよく見えないが、きっと不服な表情を浮かべているに違いない。



「む、しかしだな」

「しつこいのは嫌われるぞ」

「嫌われ…!?」



いつまでも煮え切らない感じの真田君に対し私がズバッと言ってやると、彼は結構な衝撃を受けたようだ。その表情を見る為に少し背伸びをし、切原君の肩越しから様子を窺う。おぉ、フリーズしている。



「そ、そうっすよ副ブチョ!嫌いになるっす!」

「悪かった赤也、しかしだな、俺はお前の事を思って」

「…なんだこの面倒くせぇの。ま、赤也、真田の気持ちもわかってやれぃ。で、真田、赤也の気持ちもわかってやれぃ」

「ブン、それ矛盾しとるなり」

「兎に角解決したなら帰ってくれ。クラスの皆に迷惑をかけてしまう」



何処かで区切りをつけないと永遠に長引きそうだったからそう言うと、切原君は渋々離れ、真田君と共に教室から去って行った。しかし、早速廊下からは言い争う声が聞こえる。もうどうにもならないな。



「本当にテニス部って仲良しなんだね!」

「…今のは仲良しと呼んでいい光景だったのか?」

「うん、田代ちゃんを中心にテニス部は回ってる感じだったよー」



親子喧嘩を止める為に出て行った丸井君と仁王君には着いて行かず(なんだかんだで気になるらしい)、私は床に適当に座り作業の続きを始める。すると、クラスメイトの女子2人がなんだかよくわからないテンションで話しかけて来た。前から思っていたが、女子の視点や感性というのは中々難しく、私には到底理解出来無さそうだ。という私も女子なのだが。



「田代ちゃん、テニス部入ってから楽しそうだもんね!」

「…そうか?」

「あ、って言ってももう皆引退したのかー。私達まで寂しいなぁ」



そして2人はそのまま違う話に移ったので、私はそれに加わる事無く黙々と1人で作業を再開する。引退について、確かに最初は寂しいとも思ったけど、今は目先のやる事がたくさんあるからか、あんまりそれについて考える事が無い。故に、そう思う事も無い。



「田代たっだいまー!寂しかったかー?」

「さ、続きやるぜよー」



まぁ、寂しいと思わない1番の理由は、この人達が私を1人にしないからなのだろうけど、それはあえて言う事でも無いので言ってやらない。
 3/3 

bkm main home

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -