面倒事は嫌いだけれども

極度の暑さに見舞われる事はなくなったが、それでも残暑のせいでまだ涼しいとは言えないこの季節、初秋。夏休みも終わり、私達は今までより比較的静かな生活を送っていた。つい最近のうるさかった出来事といえば、切原君が1人で修学旅行なんて嫌ッス!、と駄々を捏ねた事だろうか。まぁ、その割には北海道を満喫してきたみたいだが。

しかし、そんな静かな生活とも一端お別れする時がやってきた。



「じゃあまず、実行委員決めるぞー!」



そう、来月には文化祭、もとい海原祭が待ち受けているのだ。去年は直前に不慮の事故で入院してしまい参加できなかったが、今年は大丈夫だ。とは言え実行委員をやりたいと思うほど意気込んではいないので、此処は他力本願を決め込む。



「誰もいないなら委員長に、ってしたいんだけどなぁ、去年とは違う奴に頼みたいんだよ。誰かいないか?」



しかし、そんな面倒な委員をやりたくないという気持ちは全員一緒のようで、頼みの綱の委員長すら頼れなくなってしまったこの状況は正直とても苦しい。火の粉が此方に振りかかってこなければいいのだが、なんという何処までも自分中心な考えが頭に浮かぶ。だってさすがにこればかりは仕方ないだろう、見逃して欲しい。



「仕方ないなー、んじゃ公平にあみだくじで決めっぞ!」

『えー!?』

「えー!?じゃない!ほら、1人ずつ前出てきて名前書け!今先生があみだ作るから!」



…人生はそう上手くは行かないようだ。このクラスの人数からして、確率は38分の1。まぁそう当たることはないだろうが、万が一当たったら…その時はその時だ、丸井君か仁王君に押し付けよう。



「おい田代、今何考えたか言ってみ?」

「なんのことだか見当もつかない」

「あさっての方向見て言うことじゃなか。絶対やましいこと考えとったじゃろ!」



いつからこの2人はこんなに敏感になったんだ。全く、厄介なことこの上ないな。なんて考えていると先生に名前を呼ばれ、私は黒板に書いてある汚いあみだに自分の名前を記入しに行き、再び席に着いた。それから待つこと約5分後、いよいよあみだの解禁だ。



「お、ラッキー俺まぬがれたぜぃ!」

「俺は…よし、外れたなり」



丸井君と仁王君のように、周りからは次々と安堵の溜息やら歓声やらが聞こえてくる。私の番は次だ。前の人である相原さんは…外れか。よし、この勢いで私のも外れてくれ。

神頼みする勢いで瞳を閉じながら結果を待っていると、教室がどよめきに包まれた。次いで、先生のよし!という声が聞こえる。…嫌な予感がする。



「あみだくじの結果、実行委員は田代に決定な!頼んだぞ田代!」

「ちょっと待って下さい先生」



先生はやけに爽やかな笑顔で親指を立てて来たが、正直その指をへし折りたい衝動に駆られた。私が実行委員?無理に決まっているだろう、大体クラスの人だってこんなやる気もまとめる力も無いのがリーダーになるなんて嫌に違いない。だから私はその類の発言をし、なんとか実行委員から免れようとした。

が。



「えーでも田代ちゃん、去年皆のこと結構まとめてくれてたよ?」

「それに田代ってなんか頼りがいあるぜ?いや、これお世辞とかじゃなくてマジで!」

「田代良かったな、皆からの人望抜群だぞ!」

「…はぁ…?」



クラスの人達は次々に私を褒めてきた。逆に陥れられてるのではないかという疑問が生じてくる。所詮人間は自分が1番可愛いのだ。四面楚歌、周りに味方なし。



「丸井君仁王君、」

「言っとくけど俺らはやんねーぜぃ?それに、皆が言う通りお前決断力あるし大丈夫だって」

「田代の言うことなら喜んで聞くぜよ!」



結局2人の助けも当てにならず、私は海原祭実行委員に選ばれてしまった。もう一度言う、人生はそう上手くは行かないようだ。
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