『いっただきまーす!!』



なんだかんだで全ての準備が整うまで小1時間程かかった為、そんな挨拶が聞こえると同時に此処が戦場になるのはわかりきっていた。証拠に、目の前からどんどん肉が消えて行く。油断をしていては自分の皿に乗っている肉さえ取られかねないので、常に気を張る。



「田代、女の子がそんなにがっつくんじゃない」

「無理な話だ」

「確かに、貴方に淑女の嗜みを理解させるのは無理な話かもしれませんね…」



柳君と柳生君にそんな事を言われたが、まぁ気にしない。私の目的はカルビ、その次にサガリ、その次にマシュマロだ。後はほぼ同位。



「うめーーっ!!やっぱ苦労して食べるもんは格別っすね!」

「お前指傷だらけだもんな、よく頑張ったぜ」

「この肉中々解凍されないなりー」

「あぁ?んなもん焼けば一緒だっつーの、早くいれろよぃ」



河川敷にはちらほらと人がいるが、なんせ敷地が広い為、人目はさほど気にしなくていい。私達はそれを良い事にお構いなしにうるさく騒ぎ、それに何度か真田君が喝を入れるが、その時の真田君の声がダントツにうるさい為結局状況は変わらない。



「田代、お前マシュマロ何個食べる?」

「竹串に刺せる分だけ」

「言うと思ったー」

「田代こっち来んしゃーい、ネギ食べてー」

「やだ」



誰かが取ったらすぐに肉が乗り、乗せる係はやっぱり桑原君。このままでは彼が食べれないので、他の人だったら絶対にしないが相手が相手だ。私は桑原君のお皿にいくつかの肉を乗せて行った。



「サンキュ田代、食べれないまま終わるかと思ったから助かったぜ」

「たまには他の人に押し付けたらどうだ、真田君とか」

「ま、こうやって見てるのも楽しいもんだ」



桑原君はそう言うとまた次々と肉を乗せて行った。時々野菜も挟んでるが、切原君と丸井君はそれを自分のスペースから避けている。なんと失礼な。



「おい赤也。早食いはよくないぜぃ?」

「先輩こそもうちょっとゆっくり食ったらどうっすか?引退後は太る一方っすよ!」

「んだとコラ!」



と、ここで喧嘩勃発。2人がお互いに気を取られてる間に私は2人のスペースを横取りした。同じ事を考えていた幸村君、仁王君と箸がぶつかる。



「田代、仁王、勿論俺に譲るよね?」

「…ピヨッ」

「…」

「眉間の皺が凄いぞ」



幸村君の笑顔の重圧に負けじと肉を見つめていると、柳君に眉間を指で押された。食べ物への執念は凄まじい。

結局、私達の思惑に気付いた丸井君と切原君が再び戦場に戻って来た為、状況は更に悪化した。肉もマシュマロもどんどん無くなっていく。



「お前ら落ち着かんか!!」

「だから真田君、君が1番うるさい」



太陽もどんどん、暮れて行く。
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