翌日。

今日の部活はミーティングのみだ。夏休み中だから制服は着ずに、ジャージで学校までの道のりを自転車で走る。

昨日はあの後幸村君に送り届けられ家に帰り、いつもと同じようにご飯を食べ、お風呂に入って、寝支度をして22時には寝た。今日目を覚ますと何人からか大会のことについてメールが来ていたが、返す暇が無かったのでまだ返信していない。とはいえこの後顔を合わせるのだし、別にしなくてもいいかとも思うが。



「あ!晴香先輩!おはようございます!」

「…え」



それからしばらくして校門前に到着すると、そこにはなんと切原君がいた。いつもはギリギリか若干遅れて来るのに一体どうしたのか。しかもその顔は妙に晴々としていて、昨日の辛気臭さは完全に晴れたように見える。加えて、何故か私以外の人達もいる。わざわざ部室じゃなくて校門前に溜まるなんてどういうことだ、と疑問に思っていたら、それじゃあ行きましょ!と切原君が先陣を切って歩き出した。…集団登校?



「どうやら私達全員で揃って来て欲しいらしいのです」

「何か企んでいる確率98%」



私の心の疑問に答えてくれたのは柳生君だった。全員揃って、か。柳君の言う通り、何を企んでいるんだか。私達は目の前を意気揚々と歩く切原君の後ろを姿を見て、多分同じ事を思った。

───そして。



「…どういう事だ、赤也」

「こういう事っす!」



コートに辿り着くと、部員達が私達に向かって整列していた。その光景を見て真田君がまず口を開く。今日はレギュラーのミーティングのみだから一般部員はいないはずなのに、何故かとても凛とした表情で立っている。



「せんぱーい!!今までたくさんのすっげぇ試合をありがとうございました!!」

『ありがとうございました!!』



私達が驚いて立ち尽くしていると、急に切原君は叫び出した。その言葉に続いて一般部員も頭を下げて叫ぶ。そんな中切原君だけまた顔を上げ、しっかりとした声を放つ。



「先輩達の想い、俺達が絶対受け継ぎます!来年こそは絶対優勝してみせます!!」

「赤也、」

「全員が馬鹿みたいに強ぇあんた達を超えてみせます!!あんた達が教えてくれた事、絶対無駄にしません!」

「ん、偉い偉い」



丸井君と仁王君が言葉をかけると、切原君はグッと下唇を噛みしめて何かを堪えた。その泣き虫癖は一体いつ無くなるのか。



「だから、俺、頑張りますから、」

「うん、そうだね。俺達応援してるから。頼りにしてるよ───切原部長」



幸村君が優しく微笑みながら切原君の頭に手を乗せそう言うと、やはり彼は泣き出した。それにつられて部員のうちの何人かも泣き、真田君に至っては号泣だ。



「良い後輩を持ったものだな」

「…良すぎるくらいにな」



私の隣に立っている柳君もそう嬉しそうに笑い、こっちまで嬉しくなった。

こんなに意志の強い後輩達がいれば、立海も安心だ。まさか自分が部活の世代交代というものを経験するとは思わなかったが、これほどにまで嬉しく…どこか寂しいものだなんて。

なんて、幸せなんだろう。
 3/3 

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