「あー式とかだっりぃなぁー」

「眠いなりー」



翌日。やる気のかけらもない2人(私もなのだが)と一緒に、椅子を持ちながら体育館に向かっている今。今日は終業式で、明日から学校は夏休みに入る。といっても私達はすぐに全国大会が始まるから夏休みなんて無いも同然なのだが、それでも表面上あの退屈で仕方ない式に出なくてはいけない。正直面倒臭すぎる。



「あー暇暇暇!だからしりとりすっぞ!はい俺から、刺身!」

「「みかん」」

「お前ら死ねー」



丸井君の気まぐれに付き合うのすら面倒なのはどうやら仁王君も同じだったらしく、私達はしりとりを瞬殺した。体育館内はあまり冷房が効いていないくせに全校生徒が入ってるもんだから暑いし蒸してるし、もうなんか色々最悪だ。こんなコンディションでは寝ることすら難しい。

椅子に浅く腰掛け、ぼーっとしながら前を見据える。後ろには丸井君がいるが、先程のしりとりで完全に不貞腐れたのか話しかけてこない。前にいる仁王君はこの暑さにやられており、私と同じくぼーっとしてる。あ、今更だが順番は特に指定されていない為適当だ。



「あ」



眠れそうにはないけどあまりにも暇だから目を閉じていたその時、前、すなわち仁王君からそんな声が聞こえた。その声に反応し、一度目を開けてステージに目をやる。…あ。



「そういえば幸村君、なんか読むって言ってたなぁ!」

「そうなのか」

「ちゃんと聞いとかなきゃ後で殺されるぜよ」



そんな物騒な。しかし聞いて置いた方がいいというのは事実だから、素直にステージ上に目を留める。いや、例え聞かなくていいものでも聞くが。

幸村君は闘病中のことや全国大会へ向けての抱負などを、作文にして読み上げている。異常に真面目に見えて若干の違和感を抱いてしまうのは、恐らく素の幸村君を知っているからなのだろう。



「実際すげぇよなぁ、幸村君て」

「そうじゃのう」



2人の感想には勿論同意できるが、別に今更口に出すことでもないので私は特に喋らない。そうしていると幸村君は作文を読み終え、盛大な拍手を受けながらステージ上から降りていった。



「…あ」

「次はどうしたんだよぃ田代」



そして私は、その時ふと耳に入ったとても力強い(うるさいとも言える)拍手の音筋を辿った。…真田君だった。非常に感動した様子で、誰よりも強く細かく拍手をしている。なんともシュールだ。私の視線を辿ったのか、丸井君と仁王君も苦笑いしている。



「ほんとあいつは幸村大好きじゃのう」

「若干重すぎる気もするが」

「ははっ、真田きもー!」

「へぇ、お前らはあれくらい感動してくれなかったんだ」



肝が冷えるとはこういうことをいうのだろう。そうだ、私達はB組、幸村君はC組、必然的に式などを行うときは席が隣になる。…ん?ちょっと待て、それなら当たり前にA組も隣になるな。そりゃそうだ、表情がよくわかるくらいの距離に真田君はいたんだ、隣で間違いない。

と、いうことは。



「今きもいなどと言ったのかお前らかぁあぁ!?」

「さ、真田君!お気を確かに!」

「そうだ真田君、言ったのは丸井君だけだ私と仁王君は関係無い」

「そうじゃき」

「はぁ!?お前ら何裏切ってんだよ!」

「あーでも田代も仁王も俺の作文に感動しなかったのは同じだしー真田ー!一緒にやっちゃってー!」

「ちょ、幸村君、」



私の抵抗も虚しく、真田君は式中にも関わらず席を立ち、奇声を発しながら私達に向かって飛びかかってきた。それに対し、勿論私達も逃げる為に席を立つ。便乗して幸村君も(確実に楽しんでるだけだが)。そして放って置けないのか柳生君も。…あれ?桑原君も柳君も切原君もいる。



「田代!後ろ見てないで逃げんしゃい!」

「いや、だってなんか全員集合してる」

「んなの面白がってるだけだろぃ!俺らは逃げるぞ!!」

「待てぇええぇーー!!!」

「先輩達ー!俺も仲間に入れてー!」



───この後、私達が教師陣から盛大な説教を受けたのは言うまでも無い。一部の人達は兎も角、優等生と謳われている真田君を筆頭とした人達までこんな事をしたものだから、それはもうしつこかった。桑原君と柳生君に至っては私達を放って置けなくて来たのだから、とんだとばっちりだろう。柳君はただ単に面白そうだったかららしい。彼は何処か幸村君と似たところがあって怖い。

…全国大会前だというのに、緊張感は何処へ行った?
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