「だあぁああぁもうっ!!なんでわざわざ俺が取ろうとしたもん取ってくんすか!!ほんと潰すよあんた!?」 「そりゃあれだ、俺とお前の気が合うからだろぃ」 「嬉しくないっす!!」 パーティーが始まるなり一瞬にして騒がしくなるのはもはや当たり前のことだから、騒ぐ奴らは気にしないで俺は自分の食べたいものを頬張る。普段こういうお菓子はあまり食べないけれど、久々に食べてみると中々伸ばす手が止まらないものだ。 「はぁーもう…ってぇえ!?晴香先輩までなんで取ってんすか!?」 「うおぉ!?田代、お前俺のまで取ったろぃ!」 「だって仁王君がくれたんだもん」 「だもんじゃないっすよだもんじゃ!ちょっと可愛いし!」 「ピヨッ」 俺の隣に座ってる田代も黙々とケーキやらお菓子やらに手をつけていて、大食いなとこは健在どころか更にグレードアップされているようにも思える。田代らしいね。 「言っとくけど、これ食べたら練習だからね。全国まで時間無いんだから」 「精市ならそう言うと思った。ドリンクとタオルの手配は平部員に頼んでおいたぞ」 「部員達も、幸村君が帰ってくるという事でとても大喜びしています」 俺の言葉に嫌な顔をする奴は誰もいなくて、むしろ皆嬉しそうに返事をした。ていうか、こいつらが喜んでくれるのはまぁわかるけど、他の部員まで大喜びって…なんかお菓子でも分けてやろうかな。そう思い、近くにあった籠にお菓子をいくつか適当に入れておく。 「幸村、これからはどれくらいの頻度で通院すれば良いのだ?」 「大体週1かな。でも少しでも体調悪くなったらすぐに来てって言われてる」 「そうなった場合遠慮なく言えよ?」 「ジャッカルってば、俺がいない間に更に面倒見良くなったんじゃない?」 「かもな、子守り大変だったぜ」 そんな他愛もない話をしていると、その子守りの対象である奴らからいきなり名前を呼ばれた。言うまでもなく赤也だ。ブチョ!ブチョ!と馬鹿の一つ覚えのように騒ぎ、引っ付いてくる。 「どうしたの」 「ブチョ、写真撮りましょ写真!」 「折角なんだし俺のこの天才的携帯で撮ろうぜぃ」 ブン太はそう言って、最近買い変えたという最新機種の携帯を見せびらかして来た。写真ね、悪くない。 「いいよ、撮ろうか。ほら田代食べてばっかいないでちゃんと並んで」 「ん」 田代がケーキをまだ口をもぐもぐさせている間に、他の奴らは適当に俺の近くに集まり始めた。ブン太が椅子を使ってロッカーの上に携帯をセットし、セルフタイマーをかける。 「はい、プピーナ!」 仁王の意味わかんない掛け声と一緒にシャッター音が鳴り響き、すぐさまブン太が確認に入る。 「うん、超良い笑顔!全員に送っとくぜぃ!」 後日、その写真が俺達全員の携帯の待ち受けになったのは言うまでも無い。 「ていうか田代、今日くらい食べ物にばっか夢中になってないで俺と話さない?」 「幸村君、これ美味しいぞ」 「気持ち良いくらいスルーしたね」 そうしてまたもぐもぐし食べ始めた田代を見て、俺は軽く苦笑した後、頭にぽんと手を乗せた。不思議そうな顔で俺のことを見上げてくる田代は、口の端にがっつりクリームをつけていて、それがまたなんとも馬鹿で、…愛らしい。 「お前はそのままでいいのかもね」 「何の話だ」 「こっちの話」 周りにこいつらがいて、隣に田代がいて。それだけで充分幸せだと思える俺は、多分よっぽどこいつらが大好きなんだなと今更ながら思った。 |