我輩は猫である

「仁王君、プーちゃんがいない」

「せっかく猫缶持ってきたのに…プーちゃーん、どこじゃー!」



木陰で丸まって寝ていると、いつもの2人の声がした。もう声を聞くだけで顔が浮かぶその人達の名前は、田代と仁王だ。猫缶、とは私の餌のことだろうか。そう思い伸びをしてから木陰を出て、2人の元に歩み寄る。



「ぶにゃー」

「あ、いたプーちゃん」

「ほんとじゃ!ほらーマグロなりー」



この場所に住み着くようになってから色んな人に構われて来たが、その中でもこの2人は頻繁に私を見つけ出しては撫でたり、こんな風に餌をくれたりなどする。以前柳という人に私に餌を与えてることを注意されていたが、その後柳も構いに来てくれた。注意した手前餌はくれなかったが、2人とは違う繊細な手つきがまた気持ちよかった。



「プーちゃんまた太ったんじゃないか?」

「に゛っ!!」

「あ、怒ったぜよ」

「ごめん」



2人がくれた餌を食べていた時、急に田代がそう言いながら私のお腹を触ってきた。私は驚き反射的に田代の腕に軽くパンチをしてしまい、悪いとは思いつつも太ったと言われたことに対し少し傷ついたのは事実なので、そのまま餌を食べ続ける。私だってメスだ。



「いよいよ明日じゃな、幸村」

「…あぁ」



その時、これまでとは少し違った声色で2人が会話をし始めた。幸村。その名前を聞いたのはこれが初めてじゃない。しかし、その名前を出す人は決まって皆悲しそうな表情をしていた。だから2人がなぜこんな晴れ晴れとした顔をしているのか少し気になる。



「にゃあ?」

「お、どうしたプーちゃん」

「プーちゃんも会えるぞ、幸村君に」



だから2人の足に片足ずつ乗せてみると、そんな返事が返ってきた。そうか幸村に会えるのか。楽しみだ。



「仁王、田代、…また餌をやっていたのか」

「うわ、柳に見つかったなり」



それからしばらく2人に撫でられ続けていると、柳が来た。柳は側にある空の餌を見てまた2人に注意をする。2人は少しバツが悪そうな表情を浮かべると、それを合図に立ち上がった。



「丸井とジャッカルは家庭科室でケーキを作っている。他の者は部室で飾り付けをしているんだが、遊び出す赤也を弦一郎が怒鳴りつけてばかりで中々作業が進まない。だからお前達も早く来なさい」



柳がの言葉に2人ははーい、とやる気の無い声を揃えて返事をした。私に背を向け立ち去る3人。

着いてってみる。



「あれ。仁王君、柳君、プーちゃんが着いて来る」

「部室だし入れていいんじゃなか?」

「見たところ大人しい猫のようだしな。だが餌は与えるなよ」

「わかった。おいでプーちゃん」



後ろを着いて歩く私に気付いたのか、田代は私に両手を広げてきた。だから遠慮なくそこに飛び込み、腕の中に収まる。たまには行動的になってみるのも悪くない。
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