「痛い。痛い痛い痛い」 「田代がこげん痛がっとるとこ初めて見た」 「レアだなー」 「先輩派手にいきましたねー女の顔に傷は駄目っすよ!」 「痛い」 翌日。あの後結局看護士さんに捕まった私達は、まず第一に顔を見てかなり驚かれた。怪我をしていたのは私、丸井君、仁王君、切原君。その中でも女の私が1番血をダラダラと流していたんだから驚くのも無理はないだろう。そんなわけでとりあえず治療をしてもらった後(血の量の割に傷は酷くなかった)、それはもうこっぴどく怒られた。絶対安静の病人を走らせるなど、ましてや殴るなど言語道断だと。真田君の拳は些か威力がありすぎたようだ。…とは言っても、逃げ足は幸村君が1番速かったのだが。 「なんっか一気に心晴れたっすねー」 「お前堂々と此処にいるくらいだもんな」 「へへっ」 そして今は昼休み、切原君は私達の教室に我が物顔で居座っている。ちなみに2時間目から。顔にベタベタと絆創膏やら湿布やらを貼っている私達を見て皆はやはり驚いた顔をしたが、昨日と雰囲気が違うことに気付いたのかその中に同情の視線は無かった。 「あ、てかてか!ブチョの復帰おめでとう会やりましょーよ!」 「気が早いのう。ま、幸村のことじゃき。そう遠い話でもなか」 「ケーキは俺に任せろぃ!」 「味見は私に任せてくれ」 「晴香先輩ってちょくちょくボケますよね」 本心を言ったまでなのだがボケにされてしまった。まぁいいや。 「お前達、ちょっと来なさい」 「あ!柳先輩!」 その時、いつの間に側まで近寄っていたのか柳君が来た。飛び付いた切原君を適当に受け入れ、私達を呼び出す。 「どうしたんじゃ参謀」 「部室でミーティングだ」 「ミーティング?なんのだよぃ?」 「精市の復帰祝賀会の打ち合わせだ」 柳君がそう言い放ってから私達4人は目を合わせ、そして噴き出した。 「何か面白かったか」 「いや、皆考える事は一緒なんだなーって思ったんっす!ささっ、早く行きましょー!」 先頭を切った切原君に続き丸井君も走り出す。私は面倒だから走らない。両隣に立っている柳君と仁王君も同じ考えなのか、変わらない足取りで歩いている。 「田代、ありがとう」 「は?」 すると、急に柳君が私にお礼を言って来た。それと同時に頭に手が乗る。 「おまんがいなかったら俺達だけで幸村を立ち直せるのは無理じゃった。ありがとう」 続いて仁王君がそう言い、また頭に手が乗る。重い。 「…体を張っただけはあったか」 「あぁ、少し充分すぎるくらいにな」 「パワフルなりー」 「先輩達ー!はーやーくー!!」 「君達うるさいですよ!廊下は走らないのが原則でしょう!」 「全くだ、たるんどる!」 「おっ、ジャッカル!背中乗せてけぃ!」 「ちょ、お前太っただろ!?重っ!」 これまでたくさん悩んで来たけど、なんてことはなかった。この人達は、幸村君は、皆単純なのだ。だから私も素直な行動をとればいい。ありのままでいればいい。それが1番居心地がいい。 「…礼を言うのはこっちの台詞だ」 2人の手は私の頭をわしゃわしゃと撫で、その気持ち良さに目を瞑った。 |