時は過ぎ、放課後。



「幸村君ですね。はい、面会可能ですよ」

「ありがとうございます」



病院の受付でまず今日は面会できるかを聞いて、確認が取れたところで私達はエレベーターに乗り込んだ。昼休みはあれだけ平然を繕っていた丸井君と切原君も、今ばかりは言葉を発さない。柳生君も仁王君も柳君も。桑原君はそんな皆を心配そうな顔で見ていて、真田君は相変わらず厳格な表情をしている。



「お前らはまだ外にいてくれ。俺が先に行く」



そして幸村君の病室の前に着き、真田君がそう言い放った。それに反対する人は誰もいなく、皆ただ静かに頷く。真田君がドアをノックし、幸村入るぞ、と言うと、中からほんの微かな声でうん、という返事が聞こえた。ドアを引き、入り、閉める。



「先輩達、すみませ、俺」

「大丈夫だから。な?」



その瞬間、切原君が壁を背に力なくへたり込んだ。見兼ねた桑原君がすかさず彼に寄り添い、肩に手を置く。皆はその光景をなんとも言えない表情で見ていた。次第に顔は俯き、皆とは逆側の壁に1人立っている私からは、その多種多様な頭しか見えない。

違う。こんなんじゃない。こんなの望んでない。こんなの、



「───次はなんて言葉、聞きたくないんだ!!」



違、う。

それまで2人が何を話していたかは聞き取れなかったが、幸村君の今の叫び声で大体の流れは掴んだ。ドアが開き、中からはやはり顔を俯かせた真田君が出て来た。バタン、と、ドアが閉まる。

その瞬間、幸村君の泣き叫ぶ声が、ドアを閉めてても廊下に響いた。ひとしきり叫んだ後には、堪え切れないのか次は嗚咽が耳に入る。



「…っぐ、う…っ」



それを聞いてとうとう切原君が泣き出した。彼は精一杯堪えようとしているが、酷なことにこの静かな廊下ではどんな声も響き渡る。



「帰ってくれ、と言われた。今日は帰るぞ」

「…そうですね、今日は1人にさせておいてあげた方がいいのかもしれませんね」



真田君の言葉に柳生君だけが反応し、私達は来た時よりももっと重くなった足取りでエレベーターに向かう。まるで葬式帰りのような雰囲気を醸し出している私達は、今回ばかりは悪目立ちした。病院から出て外を歩いている間も、誰1人言葉を発さない。

1番後ろを歩いている私は、いつもの頼もしさが皆無となった彼らの背中を見ながら、今自分が何をしたいかを懸命に考えた。彼らを慰めたい、…いや違う。せめて自分が元気になって雰囲気を明るく、…これも違う。あれもこれも違う、たくさん考える。皆の足取りは重いから置いて行かれることも無い。

考えろ、考えろ。



「…あ」



そして私は考えついた。
 2/5 

bkm main home

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -