「どうだった」 「何がだ?」 「全体を通して、だ」 会場からの帰り道。これから私達は学校に戻って練習を行うのだが、歩いている時に隣に来た柳君が急にそんなことを言い出した。ちなみに切原君と真田君は後ろで、いつも通りしょうもないことで言い合っている。どうだった、なんて…そんなこと聞かれてもなんて返せばいいのかいまいちわからないのだが。 「凄かった」 「お前ならそう言うと思った」 とりあえず素直な感想を述べると、柳君は口角を上げて微笑んだ。相変わらず読めない人だな。 「お前にとっては初めての経験だったろうと思ってな。地区大会では今日ほど真剣に見入っていなかっただろう」 「まぁ…地区大会は君達があまりにも強すぎて、あっと言う間に終わったというのもあるが」 「今日のは、良い試合だったか?」 今日の青学と氷帝の試合が終わった後、柳君達はこれといって驚いた様子もなかった。それはきっと、自分達が彼らよりも強いという確信があるからだろう。 「良すぎるくらいにな」 でも、私にとっては、物凄く印象深いものとなった。きっとどの瞬間もずっと忘れられないと思う(とは言っても景吾君の試合限定だが)(他の人達知らないし)。 「勿論君達の試合も楽しみにしてる。1回戦は何処と当たるんだったか?」 「銀華中だ。これといってマークしている選手はいない」 「…そうか」 柳君がそう言うということは、失礼だがそこまで強くないのだろう。というか立海にとって強いと思える学校自体あるのかすらよくわからない。 「先輩達ーっ!何話してるんすか!俺副ブチョと2人は嫌っす!!」 「あ、赤也!?どういうことだそれは!」 「切原君、真田君が泣くからそういう言い方はやめなさい。面倒なことになる」 「田代、お前の言葉をトドメに泣いたぞ」 そこで急に背中に重みがのし掛かり、まぁ言わずもがな犯人は切原君なのだが。とにかくそれにより静かだった会話には終止符が打たれ、道端にも関わらず私達は騒ぎながら帰った。 そして、今この瞬間も私達の夏は始まっているんだと感じた。きっとこれまでの過ごしてきたどれよりも熱い夏になる、そう思った。 |