切原君が1人で何やら悶えていて様子がおかしかったから、とりあえず私は寝かせようと思いおいで、と自分の横を叩きながら言った。すると切原君はピタッ、と一時停止したように止まり、のちにのそのそと横に寝っ転がってきた。切原君のスペースを確保するために、私は仁王君側に寄る。 「晴香先輩…」 「いっつも此処でサボってるのか」 「いや、いつもは教室で寝てるッス」 「気持ち良いだろう、天気が良い日に外で寝ると」 「…はい」 「次からは切原君も一緒だな」 「…はい!!」 実のところ、切原君が私達が3人でいる時に拗ねたような態度をとっていることは、私だけではなく仁王君と丸井君も薄々気付いていた。それが確信に変わったのはさっきの、俺も誘ってくれてもいいのに、という言葉だ。ドアが開いた時点で私は眠りから覚めていたが、まさか入ってきたのが知り合いだなんて思ってもいなかったし、そのまま普通に瞳を閉じていた。だから起きるタイミングは中々考えモノだったが、まぁ結果オーライとしよう。 「おやすみッス、先輩!」 「あぁ」 私と向かい合わせに寝っ転がっている切原君は、そう言うとすぐに丸井君と同じく盛大な寝息を立て始めた。私もそれを確認してから再び瞳を閉じる。しかし、その途端ふいに背中をつん、と突かれた。振り向かなくても誰かはわかるが、一応振り向いておく。 「起きてたのか」 「やっぱ拗ねてたなり」 「素直なのは悪いことじゃない」 「むしろ羨ましいぜよ、よっこいしょ」 些か年寄り臭いその言葉と共に仁王君は上体を起こし、私の隣にいる切原君に目を向けた。私も寝るつもりだったが仁王君のその行動につられ、同じように切原君に目を向ける。 「ったく、ほんと可愛いなーこいつ」 「なんだ、全員起きてたのか」 「ドア乱暴に開けすぎなんだよぃ」 「俺もそれで起きた」 「私もだ」 目を向けると、切原君の奥にいる丸井君も目を覚ましていて、私と仁王君と同じように彼を見ていた。結果、私達は皆起きていた。 「にしても田代、純粋な赤也に刺激的なことしちゃいかんぜよ」 「私が何をした?」 「無意識ってこえーのな」 「意味が分からない」 「ぐおぉお…や、きにく…!」 途端に耳に入った寝言。それを聞いた私達は一度目を合わせ、それから噴き出すように笑った。切原君の寝顔は実に幸せそうで、それに応えるように太陽は更に照り続けた。 |