蒼く透き通る空に向かって

「あー」

「いー」

「すー!」

「…何故繋げてきた?」

「ブン、そこはすーじゃのうてうーじゃろ」

「だってアイス食いたかったし。しかもえーとおーいねえから意味ねえじゃん」



時は授業中、場所は屋上。体を大の字にして寝っ転がりながらそんなくだらない会話をする私達は、端から見ても相当くだらないのだろう。まさか、私のなんとなく出した言葉からこんな会話が繰り出されるとは思ってもいなかった。

言うのが遅れたが、何故授業中に私達が揃いも揃ってこんな所にいるのかというと、特に意味は無い。ただのサボりだ。



「にしても気持ちいなー今日の天気」

「もうちょい陽が無くてもええなり」

「眠い」



関東大会を目前にし、元から厳しかった部活はそのおかげで更に厳しさに磨きがかかった。選手は勿論、マネージャーの私にもたくさんの仕事が与えられる。朝練、放課後練、自主練とその量は結構なものとなり、家に帰れば即ベッドにダイブ、なんてことがここ最近じゃ当たり前になっている。

しかしそれでも疲れは中々取れず、私達はチャイムが鳴るなり誘われるようにこの屋上に来た。ちゃっかり担当の先生が比較的緩い授業を選んで。そして屋上に着いても即寝る体勢に入り、その状態でいくらか話した後誰かしら寝息を立て始めるのがいつものパターンだ(大抵は丸井君が1番だが)。



「ぐぉー……」

「ブンうるさーい」

「眠い」



と言った側から盛大なイビキをかき始めた丸井君。やはり今日も最初は彼だった。

しかしそれから数分後には仁王君の静かな寝息も聞こえ、両隣が寝てしまったという事実に見舞われた私は途端に眠くなり、そのまま意識を手放した。



***



「…先輩達?」



最近練習がきつすぎて授業に全く集中できねえ。や、元からしてねえんだけどよ。っつーわけで、机で寝るよりも寝っ転がって寝てえなーと思った俺は、授業が自習になったのをいいことに屋上に来た。今日天気良いからよく寝れそうだなーとか考えながら屋上に入ると、入ってすぐんとこに大の字になって寝てる先輩達がいた。晴香先輩スカートなのに大の字って!あ、でも短パンはいてる。ちぇ!…てか。



「…俺も誘ってくれてもいいのにー。」



寝てる先輩達の傍にしゃがみこみながら、そんなことを呟いてみる。クラスが一緒の先輩達は、部活に来る時は勿論、普段から3人で行動してるっぽくてかなり仲が良い。なんつーかこう、なんも言わなくても分かり合ってる感じ?…正直俺はそれが羨ましい。先輩達に着いてくのに必死な俺はそういうとこにいっつも距離を感じてる。だからと言ってこんなガキみてえなこと直接言えるはずもねえし、でももやもやするし…あぁあああぁもう!!



「何むしゃくしゃしているんだ」

「うおっ!?先輩起きてたんスか!?」

「切原君もサボりか」

「ま、まぁ…そんなとこッス」



ははは、とかつって超わざとらしい笑い方をしながら頭をかいたりしてみる。俺の目線のすぐ下にいる晴香先輩はよっぽど眠いのか、半目のやる気のない顔で俺を見上げてる。そうして見つめ合うこと数秒(やべ、ちょっと照れる!)、ふいに先輩は手を伸ばして俺の髪を触ってきた。え、ちょ何この展開!



「せんぱ、い?」

「髪がボッサボサだぞ。いつものことか」

「俺の一瞬のときめき返して下さい切実にー。はぁ、もう…」



晴香先輩がマイペースなことなんて最初っから知ってたけど、こんなこと無意識にされちゃどうしていいのかわかんねえよーしかも俺…拗ねてたし?先輩達の間に入りたいーとか思っちゃってたし?そんなこと思ってる時にんなことされちゃ誰だって動揺すんだろーがよー!!



「切原君」

「なんスか!」

「おいで」



自分でもくだらない悩みだとは思う。でもね先輩、俺がいつまでもこうやってウジウジしちゃうのは、先輩のこういう反則のせいっていうことも、ちゃんとわかってて下さいね。
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