「晴香せんぱーいっ!」

「あ」



青学のテニス部と入れ違うように戻ってきた切原君は、一目見ただけで浮かれていることがわかった。だから何かあったのか、と問いかければすぐに興奮した口調で話し始め、それが一段落すると次は頭に手を置いて苦笑いした。ころころと表情が変わって、本当にこの子は何かと忙しい。



「んでもって、色々やらかしてきちゃったっす」

「強い人がいたか?」

「それが手塚さん相手してくんなくて。…さっきのチビも中々興味深いけど」

「チビ?」

「ま、いいじゃないすか!帰りましょ先輩!」

「わかった」



流す程度の話ならそこまで大した内容ではないのだろう、そう判断した私は特にそれ以上言及せず、彼に手を引かれるまま歩き出した。此処からまた長いことバスに揺られなくてはいけないのか、面倒臭いな。



「せんぱーい、腹減ったっすー。何か食ってきません?」

「甘い物が食べたい」

「じゃあミスドっすね!」



というような成り行きで私達はミスドに立ち寄ったのだが、満腹な状態で長時間バスに乗れば眠気が襲ってくるのはもはや当然のことで。結局私達はまた下車駅を乗り過ごし、終点で運転手に呆れられながら起こされるのだった。











次の日。



「たるんどるわぁああぁあ!!」

「弦一郎うるさい。赤也、田代。バスを2回も乗り過ごすとはどういうことだ?しかも部活をサボって」

「…柳君、これは」

「言い訳はやめなさい」

「すまない」

「うぅ…柳先輩に、怒られ、た」

「ああああ赤也、泣くな!蓮二どうするのだ、赤也が泣いたぞっ」

「弦一郎うるさい」



柳君に怒られて私達がヘコんだのは言うまでもない。真田君はうるさい。
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