何だこれ。目の前の人を見て、まずその言葉が真っ先に頭に浮かんだ。



「(りっ、かい?…そういえば先輩達が強豪校とか言ってた気がする)」



掃除の途中に、変な上級生とフリースロー対決とかくだらないことをするはめになったおかげで部活に向かうのが遅くなったけど、それでも特に急ぐこともしないでマイペースに歩いてた時、この人はいた。

階段に横たわって爆睡してる(寝息聞こえるし)この人は、“RIKKAI”と書かれたジャージを頭からすっぽりかぶってて顔は見えない。でも、制服がスカートなことからして女だっていうのは明白だった。…いや意味わかんないんだけど。なんで立海の人がこんなとこで寝てるわけ?しかもただの立海生じゃなくて、テニス部のジャージかぶってるし。



「ねえ、アンタ」

「スー…」

「…にゃろう」



結局この人が誰なのかっていう疑問を捨てられなかった俺は、思い切って話しかけてみた。でも返ってきたのは規則正しい寝息だけで、なんかムカつく。だから更に思い切ってジャージを引っ剥がしてみれば、予想してたよりも整った顔がそこにはあった。こんなところで寝てるからにはどんな馬鹿面だと思ったのに。



「……誰だ」

「こっちの台詞なんだけど」



そして身動ぎをしてからようやく目を覚まし、目が合うこと数十秒。ようやく口を開いたかと思えば、その内容はかなりの勢いで訳分かんないものだった。他校の敷地内で勝手に寝といてそれはないでしょ。



「あんた立海の人?テニス部?」

「マネージャーだ」

「ウチに偵察に来た…訳でもなさそうだし。何やってんの」

「話さなきゃ駄目か」

「話したくないの?」

「あぁ、面倒臭い」

「うんもういいよ」



でっかい欠伸を隠すことなくしたこの人は、軽く伸びをしてからバキバキと関節をならし始めた。…なんかもう、この一連の行動だけでどんな人か大体想像ついた。理由も対したものじゃなさそうだし、どうでもいいや。



「そのラケットバック、テニス部か?」

「そうだけど」

「切原君には会ったか」

「誰それ。俺今から部活行くとこだし」

「そうなのか。頑張れ」

「え?普通この状況でまた寝ようとする?」



ようやく話を振られたかと思えばまた寝ようとするし、なんなのこの人。マイペースの域越えてただの変人なんだけど。まだまだだね。でも、俺がそう言えばさすがに二度寝するのはやめて、かぶろうとしていたジャージを膝の上に乗せた。



「切原君が手塚さんに会いたいとかでコートに行った。此処も強いのか?」

「当たり前じゃん。少なくともあんたのとこよりは強いよ」

「いや、それはない」

「強いし」

「ない」

「…もういいや」



くだらないことにムキになってる自分が馬鹿らしくなった俺は、この人と話すのにも飽きたし、何よりそろそろ本当に部活に行かなきゃなんないからさっさと歩き出した。



「またそのうちね」

「あぁ」



最後に一言、その人に言葉を残してからその場を立ち去る。強いって言うからには全国くらい来るでしょ。だからまた、そのうち。…にしても、変な女だったな。
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