「俺晴香ちゃん会ったことなかとね、大丈夫かー?」

「基本なんも考えとらん人やから大丈夫っすよ」

「財前、それ結構失礼やで」



小春の急な呼びかけで、晴香も含め集まることになった今日、日曜。久々に会える俺らは結構皆浮かれてんねんけど、会ったことあらへん千歳は若干戸惑っとるみたいやった。全く、変なとこで人見知りなんやから。前の方におる金ちゃんを少しは見習いや、ごっつ楽しそうやで。晴香ておもろいんかー!?、とか言うて既に呼び捨てやし。



「あ、部長、あれやないすか」

「ん?あぁおったおった。ほら千歳、あれが晴香や」

「…細っ」



開口一番がそれてどないやねん。まぁそれは置いといて、財前が指を差した先には、前を歩いとったユウジ、金ちゃん、小春、謙也と話しとる相変わらず無表情な晴香がおった。ちっとも変わってへんその姿に、勝手に口元が緩むのを感じる。あ、ちなみに今日銀さんは用事があるとかで途中から来るみたいや。



「晴香さん、久しぶりー」

「あぁ、久しぶり」

「晴香晴香!ワイ遠山金太郎言います!よろしゅうー!」

「金ちゃんて呼んだって、ウチの1年ルーキーや!」

「1年か、凄いな。よろしく金ちゃん」



謙也が金ちゃんの頭に手を乗せながらそう言うと、晴香も真似して手を乗せる。それに金ちゃんは心地良さそうに笑う。…あれ、なんか晴香雰囲気丸くなったんちゃう?変わってへんとばかり思ってたけど、前よりも雰囲気が柔らかくなったんか、その表情は優しげやった。



「蔵ノ介、またこんな大人数で押し掛けることになってすまない」

「あぁ、ええって気にせんといて。ほな材料買って行こか」



俺がそないなことを思っとったら、晴香はわらわらと後ろに人を引き連れた状態で話しかけてきた。せや、言い忘れとった。今日晴香に料理を教えるのは千歳やけど、家は俺んちを使うことになっとる。自分で言うのもあれやけど、広さ的な問題でな。

そして俺と千歳は晴香を真ん中にして歩き出したんやけど、まぁ千歳の喋らんこと。おい、っちゅーツッコミの意味を乗せて肘でどつくと、千歳からは困ったような表情が返って来た。でかい癖に度胸は半人前やな。



「君が千歳君か」

「ん、千歳千里たい、よろしく」

「何処から来たんだ?」

「熊本ばい」

「方言がわからなかったらすまない」



そない半人前な千歳の代わりに、晴香がいつもの調子で話しかけた。うわー久々やなこの淡々とした会話!千歳て女の子女の子しとる子苦手やから、これはもしかしたら馬が合うかもしれへんな。心なしかホッとした表情になった千歳を見て、まるで母親みたいな事を思う。



「晴香ちゃんは今日何を作るつもりと?」

「簡単なのが良い。メニューは千歳君に任せる」

「ちょーっと、何堅苦しい呼び方しとんの2人とも!アタシ達は名前呼びなのに2人だけそれはおかしいやろ!」

「せやせやー!」



打ち解けとるんか堅苦しいんかようわからへん2人の会話に、小春とユウジは手をビシッ!とツッコミの形に揃えて口を挟んだ。確かにこの2人だけ呼び方ちゃうのも変な話やしなぁ。そうすると2人はそれとなく視線を合わし、じゃあ、とどちらからともなく話を切り出した。



「千里でいいのか」

「ん、晴香て呼ぶとね」



千歳が名前で呼ばれとるとこ初めて見たわー、とかどうでもえぇことを考えながら、俺はこいつらを誘導するために少し前に出て先頭を歩く。でも気が付くといつの間にか隣には晴香がおって、俺はそのことになんでか知らんけど小さく笑った。なんかあれやな、従順な小動物みたいや。



「謙也ぁ!競争やーっ!!」

「ルーキーとスピードスターの実力の差見せたるでぇ!!」



あ、謙也コケた。
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