「で、何がしたいんだ君は」

「…なんなんですか?教室まで押し掛けてきて意味わかんないんですけど」

「さっきの場所にいろと言ったのにいなかったのは誰だ。随分と意気地無しだな」

「はぁ?年上だからって調子乗ってんじゃねーよ!!」

「いい加減にしろ、私は怒っている」



大きな物音を出して怖じ気させようとしたのか、机を蹴り飛ばしながらそんな陳腐な発言をしてきた倉持さんに更に怒りがこみ上げる。第一この机の持ち主に申し訳ないだろう、だから私は倒された机を戻しながら彼女にそう言い放った。



「何が気に食わない」

「…全部」

「そんなざっくりとしてたらどうにも解決しようがない」

「なんで…なんであんたなの?結局は元から先輩達と仲良かったから採用されただけじゃん。私は昔からテニスをやってた、でも怪我で出来なくなった。だからせめてサポートだけでもしてテニスに関わりたいと思ったのに…納得いかない!」

「…益々わからないな」



そう言ったと同時に扉の方から私を呼ぶ声がした。その声の主達はすぐ私の横に走ってきて、落ち着け、と抑制する言葉を解き放つ。仁王君、丸井君、それに柳君もいる。



「邪魔だ」

「田代…な?んなキレんなよ」

「1回言えばわかることなり」

「邪魔だと言っている。通せ」

「田代」



今ばかりはこの3人、そして先程から遠巻きに見てくる生徒達が邪魔で仕方ない。だから私は倉持さんの手を取りどこか違う場所へ行こうと歩き出した。そんな時に前方を柳君に塞がれ、更に気分が苛立つ。

しかし、



「きちんと解決させてきなさい」

「…当たり前だ」



柳君は他の2人のように無駄な言葉をかけてこなかった。逆に未だ私を止めようと追いかけてくる2人を抑制している。

何も、暴力で解決しようとしているわけではない。ただ単に私はこの子と話をつけたいだけだというのに、あの2人は私が普段見せない姿に動揺しすぎだ。心配はしてくれてはいるんだろうが、冷静な判断が出来ない人達に何かを遮られるのは癪だ。



「…何処、行くんですか」

「音楽室。昼休みだから誰もいないだろう」



倉持さんの声色が先程より冷静になっている。証拠にきちんと敬語も使っているし、やっとまともに話し合えそうだ。

そして私は軽く溜息を吐きながら音楽室の扉を開けた。約10分振りだ。



「続きだが。そんな純粋な動機の割になぜ不純なことばかりする」

「だから、気に食わないからです」

「テニス好きな君が同じテニスをやっている人達の判断を否定するのか?サポートしたいと思っていた人達の意見を無視するのか?」



私の言葉に倉持さんはいよいよ言葉を無くし、それを見てから結局どうしたいんだ、と純粋に思った疑問と矛盾をぶつける。すると彼女は下唇を噛みしめて恨めしそうな視線を私に向けてきた。睨まれても困る。



「…わからない、貴方が」

「?」



そして彼女は、ゆっくりと口を開いた。
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