「どう?田代の様子は」

「精市がその質問を他の奴らにもしてる確率は98%なんだが」

「あはは、バレた?」



今日のお見舞いは蓮二が1人で来た。持ってきてくれた林檎を頬張りながらそう問いかければ見事に見抜かれ、またもう1つ林檎を口の中に放り込む。確かに昨日来た真田にも同じ質問したもんなぁ、俺。



「いつもと変わらぬ様子で淡々と仕事をこなしているぞ。むしろレギュラーの方が田代にちょっかいを出しているな」

「普通は逆なのにな」

「普通じゃないからいいんだろう、田代は」



蓮二の言う事は尤もだ。そんな事、前から充分すぎるほどわかってるけどね。

でも、大抵の子はここら辺で根を上げて辞めるのがいつものパターンだ。だから俺はその可能性を危惧して蓮二に問いかけてみると、奴はノートも何も見ずに「その心配は無い」と可能性を一蹴した。



「過去にマネージャーに就任した者は大抵2週間で根を上げているからな。時期的には今がそうだろうが、田代に限って辞める事は無いだろう。それよりも俺的には、もっと別の事で不安がある」

「…そうだね」



蓮二が言った通り、田代が仕事の辛さでマネージャーを放り出すことは無いとしても、もしかしたら、変な事を考えてる女達がそろそろ動き出しているかもしれない。それを理由に辞めていったマネージャーも少なくない、とかつての先輩達は言っていた。



「俺達みたいなモテる男は辛いね」

「さほど心配していないだろう」

「だって田代がそんな女達に負けるとも思えないもん」

「それはそうだが、」

「でも、蓮二」



いくら田代が強いとはいえ、避けきれない出来事が起こりうる可能性だって充分にあるんだ。心配は勿論するに決まってる。だから俺は蓮二の目を見て、しっかりとこう言い放った。



「田代に言っておいて、何かあったら絶対言うんだよって」

「…わかった」

「うん、良し」



まぁあいつには普段仁王とブン太がついてるし、多分大丈夫だとは思うけどね。…いや、微妙か。ブン太は鈍感だし仁王はいざという時役に立たない。若干ヘタレ入ってるもん、あいつ。どこか頼りないチームメイトの事を思って苦笑すれば、蓮二も同じ事を思っていたのか、俺がちゃんと見張るよう努力すると同じく苦笑した。



「蓮二ー、田代に今度お見舞い来る時ポッキー買ってきてって言っといて」

「あいつもブン太並に食べるから気を付けておけ」

「ほんとね、前トイレ行ってる間にほとんど食べられてたことあったよ」



ごめんね田代。言い方は悪くなるけど、これもマネージャーになったのなら耐えてほしいことなんだ。でも俺達はお前の側にいるから、それだけは安心しなよ。
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