「待ちたまえ田代さん!!」

「田代ーっ!!校門をくぐったら自転車からは降りろと何回言わせるのだーっ!!」



相変わらず朝から元気な柳生君と真田君は、私のことを物凄い形相で追いかけてくる。音楽を聞いている為何を言ってるかははっきりはわからないが、概ね予想がつくからイヤホンは外さない。全く、今更自転車くらいいいだろうに。

…それにしても、昨日は幸村君の前で涙を流すという失態を再び犯してしまった。しかし、そのおかげか不思議と今日は気分が清々しい。



「田代、こっちじゃ!」

「ん」

「飽きねえなーあいつら。ほら、上靴」

「ありがとう」



自転車置場に着いても相変わらず後ろからは2人の声がする。だから、仕方ない走るか、と思った矢先、近くの窓から仁王君と丸井君がひょっこり顔を出してきた。仁王君が私の体を中に引き入れ、丸井君が持ってきてくれた上靴を手渡してくる。窓から進入した姿はギリギリあの2人には見られていないからセーフだ。入ったもん勝ち、助かった。



「こうすればあの2人から逃げられるぜよー」

「まぁ、どうせ部活の時に言われるだろうが」

「ならお前も潔く降りればいいだろぃ」

「降りるのも歩くのも面倒くさい」

「究極の面倒くさがり屋なり」

「今更だけどなー」



ローファーを片手に廊下を歩いていると妙に視線を感じる。…あぁそうか、此処は2年生の階だし、しかもこんな姿でいれば目立つのは当たり前なことかもしれない。一瞬で出てきた疑問は一瞬で消え去った。



「晴香せんぱーい!!」

「ぐふっ」

「赤也、田代が潰れる」



そんなことを思っていたら、後ろから切原君が思いっきり飛びついてきた。1年の頃は私の方がだいぶ背が高かったというのに、今じゃ私が見下ろされる側だ。気に食わない。丸井君に関してはほぼ対等の背だが。



「切原君、重い無理」

「だって先輩達が2年の階にいるなんて珍しいじゃないっすか!超目立ってるっすよ!」

「しかも田代付きだしな、そりゃ目立つだろぃ」

「いや、私は関係ないだろう」

「何言っとるんじゃ田代、学校中はおまんの話題でいっぱいぜよ」

「は?」



そこで仁王君の発言に思わず目を見開いて聞き返すが、仁王君だけではなく他の2人もきょとんとした顔をしている。なんだ、その私の方が変な事を言ったとでも言いたげな表情は。私の話題、だと?



「そんなの有り得ないだろう」

「先輩、立海テニス部のマネージャーになったって凄い事なんすよ?噂にならないわけがないでしょ!」

「しばらくは見られまくるだろーけど、まぁ頑張れよ!」

「慣れが大事じゃ」

「えぇー」



どうやら、立海テニス部という団体の影響力は私が思ってた以上に凄いらしい。辺りを見渡せば、好奇心たっぷりの視線達が突き刺さるように私に向けられていた。とは言え、注目を浴びようが何を言われようが私はちっとも気にしないのだが。



「田代、ローファー靴箱に戻さないのか?」

「面倒臭いからいい。しかも今靴箱に行ったら真田君と柳生君に会いそうだ」

「まーた追いかけられてたんすか!懲りないっすねー!」

「うるさい」



好奇心だけではなく、様々な種類の視線をひしひしと感じながら、私達は教室へ足を運んだ。
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