翌日。



「…よしっ」



光君から来た「後30分くらいで着きますわ」というメールに返事をして、準備の最終段階に入る。今の時間は18時を回ったところで、店長の意向で皆が来てから閉店までお店は貸切状態にする事になった。その心遣いに本当に感謝だ。



「戸田さーん、横断幕曲がってないですかー?」

「もうちょっと右側上にした方がいいわね、あ、そうそう!」



申し訳的度に飾られた店内の装飾は全部自分で作った。テーブルの上にもお花を添えたりしていつもよりは煌びやかだし、そこにケーキとおはぎを乗せればもっと見栄えはよくなるはず。わー、なんか楽しみになって来た!と1人で浮かれていると、厨房の方から店長に呼ばれたので素直にそっちに出向く。



「呼びましたか?」

「これ、普段は出してないんだけど、特別な日に出す事にしてる容器なの。可愛いでしょ?」

「わー…!」



店長の手の中には、桜をモチーフに繊細に作られた、ちょうどケーキを乗せるのに合いそうな大きさのお皿と、人数分のコップがあった。あまりの可愛さに喜びが滲み出てくるのを止められない。こんなに可愛い容器初めて見た!



「でも、いいんですか?皆やんちゃだから割っちゃったりしたら…」

「言ったでしょう?今日はあの子達にとって特別な日だもの。まぁ、実際に割った事はそれ程無いし大丈夫でしょう」



私の心配事を豪快に笑い飛ばしてくれた店長に笑顔でお礼を言い、それらをテーブルに並べる。で、そろそろ皆も来るからケーキとおはぎもついでに並べる。そうすると予想通り、テーブルの上はパッと明るくなって見栄えはバッチリだ。後は皆を待つのみ。



「そうだ亜梨沙ちゃん、私出勤前にクラッカー買って来たの!ちょっと裏から急いで取って来るわね!」

「えっ!?ありがとうございます!」



すると、戸田さんは、なんとそんな嬉しいサプライズを言い出した。店長も戸田さんも一緒になって皆の事をお祝いしてくれる事に対し胸がジーンとなりつつ、本当にクラッカーを持って来た戸田さんからそれを受け取り、私達は入口から1番見える位置に立った。

───そして。



「受験お疲れ様ー!!」



3人分の声とクラッカーが響き渡り、光君も私達側に立って一緒に拍手をする。皆の驚いた顔が面白くて、私は声を上げて笑った。



「え、ちょ、亜梨沙さん?」

「あーもう、今の顔写メに撮りたかったよー」

「謙也さんアホ面すぎ。ダサいっすわ」

「どういう事やー!?」



この計画は私と光君しか知らないから、金ちゃんも相当びっくりしたのかそう言いながら蔵君と千里君の裾を引っ張っている。でも2人もびっくりしてるから答えられてなくて、それがまた面白くて。私と光君はパチン、と作戦成功の喜びを分かち合うようにハイタッチした。



「あらやだ!何この美味しそうなケーキとおはぎっ!食器もかわええわー!」

「ほんまやなぁ!」



動揺する皆を席に移動させるなり、着目点が女の子と同じ小春君は食器を見て大喜びした。その事に私と店長は目を合わせ微笑む。

さて、いよいよ種明かしだ。



「ずっと前から亜梨沙さんに頼んどいたんっすわ、この企画」

「送別会の後の打ち上げで此処に来るからサプライズしてくれって、光君が提案して来たの。ちなみにケーキとおはぎは1から私が作ったんだよー!」



私達の言葉に皆は表情を驚きから喜びに変えた。小春君とユウジ君は肩を組んで泣き真似をしてて、それに皆は笑う。



「ほんまにおおきに、俺らの為に。亜梨沙さんも財前も、最高やわー」

「ワイどっちも大好きやー!!」

「感謝してもしきれんばいね」



続けて口々に言われた言葉達に、光君は少し照れ臭そうにそっぽを向いていた。

とりあえず折角の打ち上げだし、まずはお菓子を食べてもらおう。だからいつも通りその場から立ち去ろうとすると、ふいに手をグイッと引かれた。



「今日は亜梨沙さんも一緒っすわー!」



私の手を引いた人は謙也君で、彼の隣が何故か空席なことに気付く。あれ、ちゃんと人数分セットしたはずなのにな、と思い店長と戸田さんに目を向けると、店長には笑顔を、戸田さんにはピースを向けられた。…そう来ましたか。



「…じゃあ、遠慮なく」

「照れてるとねー」

「うむ」



いつもは見てるだけだったから、皆と一緒にテーブルを囲むのはなんだか不思議な感じがする。でも、美味しい美味しいと言って自分の作ったものを頬張ってくれる皆を間近で見れるのは、とても幸せな事だなと思った。
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