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バイトまでの時間を学校で潰そうと思った私は、図書館で明日までに終わらせなければいけない課題に取り掛かっていた。そこまで広くないウチの高校の図書館はひと気が少なく、今みたいに音楽プレーヤーをイヤホンで聞いていなければ本当に静かで、少し寂しい感じがする。気を紛らわすためにかけたお気に入りの曲に気を取られないようしながら、黙々と手だけを動かしていた。

するとその時、ふいにドアの方から視線を感じた。イヤホンをつけているから聞こえなかったけど恐らくドアは開けられていて、そこに誰かが立っている気配がする。なので私は一度イヤホンを外し、そちらに目線を移した。



「、え?」

「やっぱり亜梨沙さんや」

「どもー!」

「残って勉強とは偉いとねー」



最近は会えてなかったけど、それでも充分に見知った顔が並んでいる事に驚き、思わず目が見開く。

ドアの所には、制服姿の蔵君、ユウジ君、千里君が立っていた。なんでこの3人が此処にいるのかが気になった私は、即座にシャーペンをほっぽりだしてドアまで駆けた。



「な、なんでいるの?」

「今日、高校の下見日なんですわ。亜梨沙さんおるかなー思てたけどもう部活で残っとる以外の生徒はおらへんみたいやし、そない期待はしてなかったんですけどね」

「嬉しい偶然ですわー!今日ばかりは小春にくっついて行かんで良かった!」

「小春の偏差値の高校をユウジが下見に行っても意味なかとね」



そうだ、そういえば朝のHRで先生がそんなこと言ってた気がする。だから短縮授業だったのか、短くなってラッキー程度にしか思ってなかったから詳しい理由なんて全然気にも留めなかった。

ただ単に遊びに来たのならなんでこの面子なのかを不思議に思ったけど、下見となれば話は別だ。だって、前にこの3人は第一志望では無いにせよ此処を受験するって言ってたもの。それを聞いた時、謙也君が「俺ももっと勉強しとけば亜梨沙さんと同じ高校に行けたのに」と言ってくれたのを覚えてる。



「なるほど、そういうことかー。びっくりしちゃったよ」

「で、なんで亜梨沙さんは1人で此処におるんすかー?」

「明日までの課題やってたの。どうせバイトだから時間潰してから行こうと思って」

「それて、後どれくらいで終わります?」



疑問も晴れたからいつも通り3人で軽く雑談していると、途中で蔵君は私の顔を覗き込みながらそう言って来た。その覗き込んで来た表情で言葉の意味を理解した私は、もう一度深く笑った後に、



「すぐに終わらせるよ、だから待ってて。校内案内するから」

「その言葉を待ってたばい」

「後輩になるかもしれない子達の為ならお安い御用だよー」



と、返事をした。

3人の第一志望は此処ではないからこんな事を願ってしまうのは良くないのだろうけど、それでも、誰か1人でもいいから本当に後輩になってくれればなぁと願わずにはいられなかった。
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