「…何でこうなっちゃうかなぁ」



面談も無事終わって、神奈川から特急で帰ってきて。



「何やねんスーツて反則やん反則やん反則やん」

「財前が壊れたロボットみたくなっとるばいねー」

「亜梨沙ごっつ大人っぽいなぁー!」



この姿を知り合いに見られたくない、という私の願いは、正人が「腹減ったからマック行きたい」と言ったせいで見事に崩れてしまった。

レジで注文をして商品を受け取って2階席に行くと、この見慣れたメンバーは階段を上ってすぐの所でいつも通りワイワイと騒いでいた。勿論私達も皆もお互いの存在に気付き、結局テーブルを合わせて一緒の席に座っている。



「代わりに来てくれるなんてほんまえぇ姉ちゃんやなぁ!感謝せなあかんでー!?」

「謙也うっせー、唾飛ばすなー」

「亜梨沙さん、よう似合ってますわその格好」

「全然だよ、もう恥ずかしいったらありゃしない」



このまさに馬子にも衣装、と例えられる自分の姿が恥ずかしくて、私はその想いを隠す為にとりあえず頼んだポテトをつまみ続けている。穴があったら入りたいっていうのはこういうことを言うんだなぁ、なんてついでに思っちゃったり。



「このフリルのシャツが派手すぎなくて素敵やわぁーっ!」

「似合わないから普通ので良いって言ったんだけど、お母さんがね」

「おかんグッドチョイスや!」



両隣に座ってる小春君とユウジ君にまでそんな事を言われて、更に居た堪れなさは増す。何この集団フォロー?どうせならはっきり言っちゃってよ…!



「誠に似合っとる。もっと自信を持っても良いですよ」

「…そうかな?」



でも、そこで銀さんに真顔でそんな事を言われて、少しだけ気持ちが盛り上がって来た。皆が嘘を吐いてるって言ってる訳じゃないけど、なんか銀さんの言葉には人一倍説得力がある。

だから私はいっその事開き直る事にして、投げかけられる数々の褒め言葉(フォロー?)にお礼をしつつ対応した。



「ほんで、正人は高校何処行くん?」

「姉ちゃんと同じとこ」

「ほんっと亜梨沙さんの事が大好きとね」

「そういう訳じゃねーし、近いからだし」



そこで蔵君から問いかけられた質問に正人が答えると、一気に皆は冷やかしモードに入った。普段は別に思わないけど、流石に今のちょっとムキになった感じの正人を見ると、自分でも愛されてるなぁなんて思っちゃったり。でも、口に出せば拗ねる事間違いなしだから私は何も言わない。



「皆の中でウチの高校来る人はいないの?」

「んー、何とも言えないですねぇ。第一希望の時点では皆ちゃいますわぁ、寂しいけど」

「そうなんだー…」

「俺が高校行く時は絶対亜梨沙さんのとこ行きますわ」

「ほんとにー?待ってるよ」



私の質問に対しての小春君の答えに、ちょっと寂しい気持ちが胸を渦巻く。考えてみれば小春君なんかはすっごく頭が良いんだし、ウチの高校の偏差値じゃ絶対物足りないもんなぁ。私のバイト先に遊びに来る頻度も、前は私のシフトが入っていない時でもしょっちゅう皆で来てたみたいだけど、最近ではめっきり少なくなったし。そっか、皆受験生だもんな。当たり前の事だと思っていたはずなのに、改めて実感するのは今が初めてかもしれない。



「受験が終わったらまた皆で行くばい」

「うん、楽しみにしてる」



それからまた少し話し込み、私達は20時にマックを出て、各自の帰路に着いた。

皆と出会ってから色んなイベントを皆と過ごしてきたけれど、今年の冬はそれも諦めた方が良さそうだ。そんな類の言葉を正人にポツリと呟けば、「来年もあんだからいいじゃん」とサラッと切り返されて、私はその単純だけどもっともな言葉に笑みをこぼした。

今私に出来る事は、皆を応援する事だ。どうか皆がそれぞれ望んだ道に進めますように。そう心の中で祈りながら、今日は眠りについた。
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