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「ただいまー」



うー寒いっ、と身を縮こまらせながら早々と玄関に入り、靴を脱いで家の中に入る。いつもならここでお母さんからおかえりー、と返ってくるのだけれど、今私の目には、お母さんと正人がリビングで何やら考え込んでいるという光景が繰り広げられている。此処から立海まで通っている正人がなんで私より早く帰って来てるのかも謎だけど、それ以前に2人は何を考え込んでいるのかが気になった。



「どうしたの2人共」

「あ、姉ちゃんおかえり」

「おかえり亜梨沙。いやー、この事なんやけどね」



そう言ってお母さんが見せて来たプリントには、「三者面談について」という見出しが書かれていた。それを見てあぁなるほど、と大体の成り行きを把握する。



「お母さん行く暇あるの?」

「それがなー、学校が近ければ仕事もまだ抜け出せるんやけど、神奈川まで行くのは流石になぁ」



この時期の三者面談は進学先についての内容が主だから、保護者は絶対に話を聞いておいた方が良いはずだ。正人も正人で自分1人だけじゃ不安な面もあるはずだし、二者面談にさせるわけにはいかない。かと言ってお父さんには頼むはずがないし…うん、仕方ない。



「いいよ、私が行くよ」

「えっ、姉ちゃんマジで言ってんの?時間あんのかよ」

「一応先生に掛け合ってみるけど、例え欠席扱いになっても1日くらい大丈夫だよ。そんな簡単に留年にはならないし」

「でも、本当にええの?」



2人の不安そうな、申し訳なさそうな顔を見て、それを跳ね除けるように笑顔を作る。



「心配しなくても大丈夫。それより正人が適当な受け答えして受験失敗する方が心配だよ」

「…姉ちゃん、ひっでー」

「でも確かに、去年の亜梨沙の三者面談も、話を聞かなきゃわからへん事ぎょーさんあったもんなぁ。正人1人じゃ不安だわー。…頼んでもええ?」

「任せてよ」



そうしてようやく話はまとまり、お母さんは夜ご飯を作る為に立ち上がって台所に行った。私と正人も制服から着替える為に1回各自部屋に戻って、また続けて台所に行く。



「悪いな姉ちゃん」

「ううん。ていうか私未成年だけど、保護者代わりになるのかな」

「そこは俺から先生に話しとくよ」

「そっか、じゃあお願い」



それから私達は他愛もない話をしながら夜ご飯が出て来るのを待った。ちなみに正人がいつもより帰りが早かったのは、明日からテスト期間に入るから今日は午前授業だった為との事。そして、三者面談はそのテストが終わった来週だ。それまでに先生と話して、後バイトの休みも取らなきゃ。



「わー!ハヤシライスだー!」

「うっまそー」

「当たり前やん、昨日から熟成してたんやから!ほな食べよか」



そんな事務的な事が思いついたと同時に、皆にお土産何買ってこようかな、なんて考えた自分がおかしくて、私は美味しいハヤシライスを食べながら笑った。
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