「こら食材もっと買ってくるべきやったなぁ」



残骸と化したチーズフォンデュの跡地を見て、蔵君は眉を下げて困ったように呟いた。具材が乗っていたお皿もチーズが入っていたお鍋もすっからかんなのに、皆はまだ食べたりないのかウズウズしてる。私はもうお腹いっぱいなんだけどなぁ、現役運動部の男の子はやっぱり凄い。



「亜梨沙ー、白玉作うてやー」

「わかったよー」



そうしていれば早速金ちゃんにさっきの約束を掘り返され、私はキッチンに行くついでにと食べ終わったお皿を手に取り、立ち上がった。私の行動を見た皆も同じ動作をして、結局また全員でキッチンに行く。



「あれユウジ君、お母さんは?」

「多分部屋で仕事してますわ。白玉出来たら言うてーとか図々しい事抜かしとったわ」

「まぁまぁ」



ユウジ君に言われなくても元々持って行く予定ではあったんだけどね、一応確認の意味で。

で、まずは食器を片付けないと始まらないから洗う為にスポンジを手に取ると、それは一瞬にして光君に横取りされた。もう1個余分にあったのも小春君に取られ、あれ、やる事なくなっちゃった。



「これくらい俺達がやりますわ」

「亜梨沙さんは白玉お願いしますっ!」

「わぁ、ありがとう」



2人の嬉しい好意に甘える事にして、私は手近にあったボウルに白玉粉を目分量で入れて、早々と白玉を作り始める事にした。なんか手伝う事は無いかと聞きに来てくれた千里君にはお鍋にお湯を沸かしてもらい、次第に固まって来た白玉を更にグイグイと捏ねる。

そうして耳朶くらいの固さになれば、ここからは誰でも出来る作業だ。隣で興味津々にしている金ちゃんに「一緒にやる?」と言えば、もげそうな位の勢いで首を縦に振られた。



「基本はこうやって丸めて、真ん中をちょっと潰す形ね。でも極端に厚すぎなければどんな形でも大丈夫だよ」

「ならワイ色んな形作うたるでー!」

「亜梨沙さん、それ俺でも出来ます?」

「誰でも出来るよ。皆でやろっか」




金ちゃんに続き謙也君も興味を持ち、結局全員で形作りの作業をする事になった。となると私の作業は茹でるだけで良くなるから、皆には更に形が出来るなりそれをどんどんお鍋に入れてもらう事にした。浮かび上がって来た所をすくって、ザルに上げて。



「謙也さんなんやねんそれ、へったくそ」

「ハートや、見ればわかるやろ!お前かてなんの面白みも無いもん作りやがって!」

「謙也うっさいで、唾飛ぶやろ。後金ちゃん、そのままじゃ食えへんから口に入れたらあかんで」



キッチンから皆が一生懸命作っている様を見つめていると、それぞれの役割がはっきりわかって何だか凄い楽しい。

銀さんなんかはかなり集中して形の良い物を作ってる。小春君のハートは謙也君のハートよりも(失礼だけど)綺麗で、お湯からすくい上げる時は思わず慎重になった。



「ユウジ君、味付けの材料何あるかな?」

「勝手にそこらへん漁ってえぇっすよー!きな粉とかあったと思いますー!小春、これワイの気持ちやでー!」

「ユウ君のアタシに対してのハートは随分歪んどるんやなぁ」



ユウジ君からお許しをもらった所で、若干謙虚しつつも冷蔵庫やら棚やらを物色する。その結果手に入ったのはきな粉、餡子、生クリーム、胡麻、それに砂糖と醤油を合わせたもの。これだけあれば大丈夫でしょうと決め、それらを各々お皿に取り分ける。お母さんの分も勿論他のお皿に取り分けておく。



「おっ、亜梨沙ちゃーんこれ私の分ー?」

「そうです!今持って行こうと思ってました」

「おおきになぁ」



するとちょうどいいタイミングでお母さんが来たから、お箸を添えてお皿を渡した。皆もリビングに次々と膨大な数の白玉を運んで行ってて、その光景をお母さんは私と同じように微笑みながら見つめる。



「楽しいやろー、あの子ら。中学入ってからずーっと、あんな変な息子と仲良くしてくれとるんやで」

「ユウジ君はとても優しくて良い子ですよ」

「ユウジもいっつも亜梨沙ちゃんの事そう言っとるわ」



え、そうなんだ。まさかの褒め言葉に少し驚いて、お母さんに視線を移す。お母さんは相変わらず皆を見ていて、その横顔は凄く穏やかだ。



「これからも頼むな、あの子らの事」

「…はい」



どちらかというと私の方が沢山支えられて来てるのに、まさか直々にこんな事を頼まれるなんて。でも、私だって支えたいと言う気持ちは一緒だ。



「亜梨沙ー、はよきぃやー!!」

「うん、今行くね」



まぁそんなしんみりした雰囲気はおいといて、今は白玉を頬張っちゃいますかー!
 3/3 
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