17 「亜梨沙さん、今日が何の日か知ってまっか」 「あ、光君いらっしゃい。今日?知ってるよー、ポッキーの日でしょ?」 「ちゃいます」 暖簾を下げ閉店準備をしていると、急に光君がその言葉と共にお店に入って来た。ちなみに店長と戸田さんはこの時間に皆が入って来ても快く出迎えてくれるので、その辺りの心配はいらない。 で、話を戻すけど…あれ、11月11日の今日ってポッキーの日だよね?学校でも購買で皆と色んな種類のポッキーを買ってパーティーしたし、これ以外に思いつかないんだけどなぁ。そう思い首を傾げながら光君に目をやると、光君は人差し指を立てながらちょっと得意げに口を開いた。 「チーズの日や」 「え?チーズ?」 「せやから亜梨沙さん、チーズフォンデュしましょ」 まさかの答えに驚き、話を進める光君に着いて行けず置いていかれる。そうなの?チーズの日なの?ていうかチーズフォンデュって、んんー?疑問がありすぎて思わずしどろもどろになっている時、タイミング良く店長からあがっていいよ、と言われた。だから私は一度裏に行き速攻で着替え、再び光君の元へ行った。 「お待たせ。で、どういうこと?」 「俺も知りませんでしたけど、小春先輩曰く今日はチーズの日らしいっすわ。ほんでテンション上がった先輩らがチーズフォンデュやろ言うてうるさくて」 「な、なるほど」 「折角やから亜梨沙さんもと思て、誘いに来ました。先輩らは先に用意してます。ちなみに場所はユウジ先輩んちやから亜梨沙さんも帰り楽やろ?」 トントン拍子で進んで行く会話には、最早相槌を打つのがやっとだ。とりあえずチーズフォンデュをやるという事はわかった。今日がチーズの日である由来は、ユウジ君の家に着いてから直接小春君に聞いてみよう。 最初はそれこそ驚いたけど、状況を理解するなり段々私もテンションが上がって来た。チーズフォンデュなんて滅多に家じゃやらないし、これは楽しみ! 「亜梨沙さん何か食べたいものあります?コンビニ寄って来ましょか?後荷物持ちます」 「特にないかなー。あ、ありがとうわざわざ」 「当たり前っすわ」 相変わらず優しい光君もいつもより口数が多くて、なんだかんだで楽しみなんだろうなって事が一目にしてわかる。 マンションに着いてからはとりあえず一度家に戻り荷物を置き、冷蔵庫から適当に使えそうな食材を拝借する。どうせなら正人も誘おうと思ったけど、遊びに行ってるのかまだ帰って来てなかったからそれは断念した。ちなみにその間も光君は玄関で待っててくれた。 「ごめんねー、お待たせ」 「何もですわ。ほな行きましょか」 そうして私達はようやくユウジ君の家の階に出向いた。玄関前まで来た所で既に皆の騒ぎ声が聞こえて、思わず笑ってしまったのは内緒だ。 |