「ほな、またすぐにでもお店行きますわ」

「うん、待ってるよ」

「正人もアド教えたんやから連絡しぃや!」

「気ぃ向いたらなー」



蔵君と謙也君の言葉に2人で返事をして、わざわざ見送りに来てくれた皆と視線を合わせる。

校内も一通り回って、皆ともたくさん話して、目一杯四天の文化祭を堪能した私達。そういう楽しい時間というのはとても過ぎるのが早いもので、あっという間に一般公開終了の時間になった。



「まさか銀さんが外で座禅組んでるとは思わなかったよー。全然話せなかったね」

「申し訳あらへんことをしてもうた」

「いや、小春とユウジより面白かったぜ」

「聞き捨てならんで正人おぉお!!」



ちなみにどれだけ探しても見つけられなかった銀さんは、なんと校庭の大木の下で座禅を組んでいた。帰り際に見つけたから全然話せなかったけど、気付いた瞬間の正人の爆笑具合といったらなかった。うちの弟はどうやらシュールな笑いが好きみたい。それなら小春君とユウジ君もシュールといえばシュールだった気がするけど…笑いのツボは人それぞれ、気にしても仕方ない。うん。



「来年は亜梨沙さんの高校の学祭にも行くっすわ」

「せやなっ、アタシ達は卒業しとるけどそん時は皆集まって行きますぅ!」

「是非是非ー。あー、皆もう卒業かぁ」



そこで小春君が発した言葉に、なんとも言えない気持ちが心の中に舞い込んで来た。そっか、四天は公立中だから、高校は皆バラバラなんだ。これまでみたいに学校帰り皆でお店に寄ることは例え出来たとしても頻度は減るだろうし、そう考えるとやっぱ寂しいなぁ。

まだ秋なのに気が早い、とか思ってても、実際今時期から卒業にかけての期間は凄く短く感じるものだ。皆も口には出してないけどもう受験勉強は始めてるはずだし、そうなると冬休みは勉強漬けのはず。…あれ、じゃあ本当にもう、皆とこうやって毎日の様に会えることってなくなるんだ。



「そぎゃん悲しい顔せんとー」

「うわ、顔に出てた?」

「なんとなくわかるたい」



千里君の言葉でふと我に返り周りを見渡すと、皆も千里君と同じような、ちょっと困った笑顔を浮かべていた。それを見て頭を振り、慌てて気持ちを切り替える。



「ご、ごめんごめん!じゃあお店で待ってるね!この後も楽しんでー!」

「ほななぁー!!正人ごちそーさん!ワイお腹いっぱいやー!」

「別に奢りたくて奢ったわけじゃねぇけどな…んじゃ、また」



心配かけて此処で長時間立ち止まらせるのもなんだし、そろそろ帰ろう。そう思った私は、少し強引だけど別れの言葉を皆に告げ、正人と一緒に歩き出した。

自分の卒業式でもないのになんでそんなに寂しい想いになるのかと聞かれれば、やはりそれは皆と過ごして来た時間がそうさせてるんだろう。あのお店は、私達の色々なものを繋げてくれた。



「姉ちゃん感傷に浸りすぎー」

「うるさいですー」



なーんて、感傷に浸ってしまうくらいなら考えるのをやめよう。自分から寂しい気持ちにわざわざなることもないし、よし、やめよう!

と決めたものの、帰る時に手を振ってくれた皆のなんともいえない表情が頭から離れなくて、結局文化祭で高まった気持ちは一気に下がってしまった。

どうしよう、最早皆に会いたい。これ重症かもしれない。
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