「亜梨沙さん!正人!」

「いらっしゃいませぇーんっ!」

「…何やってんのお前ら」



1組の千里君、5組の銀さんのクラスに行ったもののそこに2人の姿は無かったから、私達は先に8組の小春君とユウジ君のクラスに来た。で、そこには2人がいたから良かったんだけど…何故か新郎新婦の格好をしていて、思わず目が点になる。正人に至っては構わず口に出しちゃってるし。



「漫才やってますのん!次出るから見てってやー!」

「俺達のコント、毎年中々人気なんですわ!」

「へ、へぇー」

「よし姉ちゃん、金ちゃんとこ行こう」

「待ちぃや正人!どないやねんそれ!」



まぁ確かに教室内にはそれなりに人がいるし、2人を携帯で写メってる人もいるし、人気には人気なんだろうけど…やっぱりガチなのかな、この2人。そんな事を頭に思い巡らせつつ、とりあえず私達は客席である椅子に座った。



「どーもー!ユウジでーす!」

「小春でぇーす!」

「2人合わせてー!」

「「四天最強ラブルスでーす!」」



そして2人のコントは始まった。…うん、これに関しての感想は控えさせてほしい。ただただ2人がラブラブで幸せそうで何よりだ、とだけ言っておこう。



「大阪人って凄いね、正人」

「色んな意味でな」



気を取り直して、次行きましょー。



***



「金ちゃんはー…いた!って、あれ?」

「お、金ちゃん、亜梨沙さんと正人が来たとね」

「ほんまか!?」



途中で色んな所に寄り道をしながら金ちゃんのクラス来ると、そこには金ちゃんだけではなく千里君もいた。金ちゃんは千里君に肩車されていて、頭がもう少しで天井に付きそうになっている。本当に背が高いなぁ。



「久しぶり、元気しとっと?」

「おう、お前らは皆元気過ぎるくらいだな」

「正人久々やんかー!会いたかったでー!」

「うおっ!」



金ちゃんは満面の笑みを浮かべながら軽い身のこなしで正人の肩へ飛び移った。凄い身体能力、と感心していると、隣に来た千里君が「フラれたばいー」とかいうものだから思わず笑ってしまった。



「残念だったね」

「子供は素直で無邪気なとこがたまに適わん。亜梨沙さん、他の奴らには会って来たと?」

「後は銀さんだけ。ていうか千里君今休憩中なの?教室に行ったけどいなかったからさ」



私がなんとなくそう問いかけると、千里君は無言で苦笑しながら舌をぺろ、と出して恍けた様な表情を浮かべた。え、あ、何、サボりですか!



「いいのー?クラスの人困るでしょー」

「縛られてるのはどうも苦手なんね。金ちゃんのクラスは創作展示ばってん楽で羨ましい」

「千里君らしいね」



自由気ままというか、自分に正直というか。でもそこが千里君の良い所でもあるし、金ちゃんも優しい千里君に凄く懐いてるみたいだから、彼はきっとこのままが1番良いんだろう。なんて事を思っていると急に正人と金ちゃんの騒ぐ声が大きくなって、次はそっちに視線を移す。



「やーめーろ!髪引っ張んなー!」

「正人ーワイ腹減った!何か食いたい!奢ってやー!」

「はぁ!?」



笑顔で楽しそうにしている金ちゃんにペースを全部持ってかれている正人を見て、自然と口元が緩む。そうして笑っていると、ふと隣から同じように笑い声が聞こえた。



「亜梨沙さん、楽しそうけんね」

「あ、私?うんー、楽しいよ」

「良かった」



そう言って千里君は私の頭を抱えるようにして撫でた。なんか子供扱いされてるような…ま、いっか。

それから正人は結局金ちゃんの食い倒れツアーに付き合わされ、私達はやっぱりずっと笑っていた。
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