「おぉ、遅いで2人ともー」 「…あのー、皆?」 「亜梨沙さん、はよ座っちゃって!光ンも亜梨沙さん連れ出すなんてほんまちゃっかりしとるんやからー!」 「光くーん、チョコ買うて来たー!?」 「ほらな、せやから勉強会なんてもう無理や言うたでしょ。金ちゃんちょおつめて、俺座れへん」 「…もういっか」 光君とまったりコンビニに行き、まったり家に帰ってくると、なぜか居間は勉強会からお好み焼きパーティーに化していた。私達がコンビニに行っていたのはせいぜい30分くらいなんだけど…その間にここまで用意ばっちり終わらせちゃう皆って手際良いなぁ、って感心してる場合じゃ無い!…まぁ、もう何言っても遅いか。 いい加減諦めがついた私は、小春君が空けてくれた席にちょこんと座った。左には小春君、右には千里君だ。 「なんね、友香里ちゃんがおるならミユキも連れてくれば良かったとね」 「ミユキ?」 「千歳の妹やで。亜梨沙さん、千歳ごっつシスコンやねん!」 千里君の言葉に蔵君はせやなぁ、と相槌を打ったけど、謙也君はそれを冷やかした。へぇ、シスコンなんだー。 「でも、千里君みたいなお兄さんだったら妹さんも嬉しいんじゃない?」 「亜梨沙さん言ってくれるとねー。ドキッとしたけん」 「俺もさっきその攻撃くらったっすわ。破壊力抜群」 いやいや、貴方の笑顔に比べたらこんなのどうってことないでしょ、と千里君に同調した光君にそんな事を思ったのは、口には出さないでおく。でも、千里君は賑やかな皆の中でも落ち着いてるし面倒見いいし、本当に素敵なお兄さんだと思うんだけどなぁ。 「友香里、ちょお台所から皿持って来て」 「えーめんどいークーちゃんが行ってやー」 「ほなジャンケンで決めよ。ジャーンケーン」 傍らで交わされる白石兄妹の会話にも思わず微笑む。意外と蔵君にも子供っぽい所があるんだな、と新たな発見だ。 「亜梨沙さん、明太子食べれますー?」 「うん、食べれるよ。明太チーズ味とか好き!」 「ほな作ったりますわ!」 そして話題はお好み焼きに移り変わり、ユウジ君は早速腕まくりをし、張り切ってお好み焼きのタネを作り始めた。ていうかこんなに材料が充実してるなんて、やっぱり白石家は凄いなぁとここでも感心する。 そんなこんなでお好み焼きパーティーは幕を開けた。床に無造作に投げ捨てられてるテキスト達を視界の端に捉えながらも、なんだかんだ楽しみで仕方ない自分がそこにはいた。 *** 「お、発見」 時は過ぎ、夕方。 半端な時間にお好み焼きパーティーを始めたおかげで、本来夕飯前のこの時間でも私のお腹は一杯だ。それは皆も同じなのか、各々横になったりとのんびりとした空間を過ごしている。その中でも元気に「ゲームをする!」と言い出して機械を取りに蔵君の部屋まで来た金ちゃん、謙也君、ユウジ君の後に続き、私も彼らに着いて来てみた。純粋に蔵君の部屋はどんな感じなのか気になったのもあるけど、1番はやっぱり、さっき友香里ちゃんが言っていたことを確かめる為だ。 「友香里からなんか聞いたんですか?」 「うん、私の事蔵君の彼女だと勘違いしてたよ、このおかげで」 「あいつ…」 皆の写真が入ってる写真立てのフレームに、申し訳程度に貼ってある私が映ったプリクラを指しながら、さっき友香里ちゃんに言われた事をそのまま言ってみた。すると蔵君は呆れたように溜息を吐き、苦笑した。 「ほんまそういう話にすぐ食らいついて来るんやから…すんません亜梨沙さん」 「ううん。むしろ私の方こそって感じ」 蔵君の彼女なんて立場、私なんかが貰って良いものじゃないし。そんな意も込めてそう言うと、蔵君は眉を下げて困ったように笑った。 「そういう意味で言ったんちゃいますて。それに俺、亜梨沙さんなら大歓迎やし」 「え゛」 つい女らしからぬ濁った声が出たけど、今ばかりは仕方ない。こんな事をサラッと言いのけちゃうなんて、蔵君…なんて罪な男。サービス精神に気合が入りすぎてるよ。 なんてしているうちにもゲームを手にした皆は、早速テレビに繋げて遊ぶ為に再び居間に向かった。おー、元気元気。 「ほな、行きましょか」 「そだね」 蔵君ももういつも通りだし、さっきのは大阪人のノリとして受け止めよう。ほら、大阪人て商売とかも上手いっていうし、ね。 ───それからもグタグタと皆で騒いでいたらあっという間に日は暮れ、あっという間にお開きの時間になった。蔵君ファミリーにお礼を言い、皆で玄関を出る。 帰り道は必然的にユウジ君と一緒だから、結局勉強はろくにしなかった事、でもお好み焼きは美味しかったし凄く楽しかった事などを話し、家に着く最後の最後まで楽しい時間を過ごす事が出来た。いつもはお店に皆が来てくれるけど、それでも仕事中な事には変わりない。だからこうやって完全なプライベートで遊ぶというのは、不思議な感じはしたけど嬉しかったし、何度も言うけど本当に楽しかった。 「ほな亜梨沙さんおやすみなさーい!」 「うん、おやすみユウジ君」 あわよくばこれからも皆とこうやって遊べますように、と、まだお好み焼きの味が残る口内を噛み締めながら思った。 |