「明日からよろしくね、亜梨沙ちゃん!」 「はい、よろしくお願いします。店長、ごちそうさまでした」 「はーいまた明日ねー」 結局面接という名の雑談から随分長居して、お店を出たのは17時過ぎだった。でもお店のものを色々食べさせてもらったし、お客さんがいない間は店長と戸田さんと色々なお話を出来たから、結果的には良い時間を過ごせたと思う。…あ、やっぱり戸田さんも結構な適当人間でした。 ていうのはおいといて、時給も悪くないし、忙しすぎないし、明日から早速楽しみだなぁ。働くのは初めてだからそりゃあ少しは不安もあるけど、あの穏やかな空間の中働けるんだと思えばそれも薄れる。そりゃあ自然と浮き足立ちますよ。 「白石ー、ワイなぁ、白玉ぜんざいと抹茶パフェ食いたい!後なぁー!」 「はいはい着いたらメニュー見て決めよな。にしても財前行きつけの店いうくらいやから相当美味いんやろなぁ」 「当たり前っすわ。あ、そこ曲がったとこっすよ」 そんな考え事をしていたら、私の横をジャージを着た部活帰りっぽい男の子達が通り過ぎて行った。そして、その会話に耳を傾ける。白玉ぜんざい、抹茶パフェ、曲がったとこにある店…絶対ウチの店だ!へえ、どこの学校かな。一気に注がれた興味を発散する為に視線をその子達に向けると、そのジャージの背中には四天宝寺、とプリントされている。 え、隣じゃん。 四天宝寺中。それは、ウチの高校のすぐ隣にある異常に笑いにこだわった中学校だ。中学生の男の子達が部活帰りに甘味処って…渋いな!心の中で勝手にツッコミをかましつつもう一度その子達の方に目を向けると、まさかの1人のヘアバンドを着けた男の子とバッチリ目が合ってしまった。でも、同時に物凄い効果音がつくくらい勢いよく顔ごと逸らされる。私の顔がそんなにおかしかったか緑のヘアバンド君…あの子達が常連ならば、多分明日から顔を合わせる機会が増えるというのに。とほほ。 ───私はこの時、気付いていなかった。この子達が今後の私の人生にどれだけ莫大な影響を与えるかなんて、これっぽちも気付いていなかった。 ドラマが、始まった。 |