「白石のアホー!ワイも亜梨沙に会いたかったー!!」

「はいはい、打ち上げ終わった後に行く約束したからそん時まで我慢しぃや」

「そうよ金太郎さん、流しそうめんの後のあんみつは最高よ!」



俺が昨日1人で亜梨沙さんとこに行ったんがやっぱり気に食わなかったんか、金ちゃんは朝練に来るなりそう言って駄々をこねた。小春とかは一緒になだめんの手伝ってくれとるけど、どーにもいけすかん顔しとる奴がまだおる。だから俺はそいつらを一瞥した後、呆れから来る溜息を惜しみなく吐いた。



「ユウジ、財前、何お前らまで拗ねてんねん」

「拗ねてへんわ!」

「拗ねてないっすわ」



いつもは小春に抱き着いたり謙也をからかったりでまともな練習せぇへんくせに、今だけやたら真面目にラリーしとるこの2人。っちゅーかお前らが一緒に練習すること自体普段ならありえへんやろ、ダブルスの相手決まっとるんやから。こういう時だけ息合わせて…面倒くさいやっちゃなぁ。心の中で愚痴りながらも、とりあえず機嫌を窺う為にもっかい口を開く。



「そない亜梨沙さんに会いたかったんか」

「べべべべつに!?俺には小春がおるし!?朝一緒に登校できんくなったんが嫌やなんて一言も言うてないからな!」

「ユウくん、それ墓穴掘ってるわよ」

「亜梨沙さんに会いたいっちゅーか、あの店教えたんの俺なんにせこいっすわ。どうせちゃっかり仲良くなったりしたんでしょ」

「ざいぜーん、ボロ出とるでー」



2人の発言に小春と謙也がそれぞれツッコむ。なんちゅーか…手に負えへんな。懐いとんのはわかるけどこうもわかりやすいと見てて痛いわ。



「んー…おはよー…」

「おはよー、やないで。もう集合時間すぎとるっちゅーに。まぁお前が朝練に出るだけ珍しいか…」

「珍しく起きれたとねー」



そこで相変わらず腑抜けた顔で来たんは千歳やった。放課後練もまともに出ん千歳が朝練に来るんは珍しいことやから、こいつらの意識は一気にそっちに行く。単純な奴らや。



「…って、何やっとるんお前」

「…べっつにぃー。」



せやけど、一筋縄ではいかん奴が1人おった。えぇぇえぇめんどくさ。なんかしゃがみこんでラケットで地面に落書きしとるし。お前そないなキャラやないやろ、天才ウリにしとるんやろ?一気に沸き上がって来た数々のツッコミを口に出すのをグッと堪えて、財前と視線を合わせるように俺もしゃがみこむ。



「なぁ、財前」

「うるさいっすわー」



普段俺達を敬うことなんて全くせえへんのに、財前は亜梨沙さんだけは異様に慕っとる。ちゅーより執着しとる。確かに居心地がええ人やけど、それでもこの財前がこないになるまでってありえへんよなぁ…あ。



「あぁー、やっとわかったで」

「…なんすか」

「お前家庭的な女の子がタイプやもんな」



そこで1つの考えが浮かんだ俺は、それなら納得やなぁって一瞬思たけど、よくよく考え直すとちょお待ち、ってなった(何1人でノリツッコミしとるんや俺)。だって、そゆことならもしかしてこいつ…



「え、ちょ、待てお前」

「だからなんすか!!」

「亜梨沙さんに惚れとるん?」

「はぁ?部長のドアホ!」

「誰に口聞いてんねんーお前がそないな口聞いてええ相手は謙也だけやでー」



生意気な口聞いた財前の頭を鷲掴みにしながらそう言えば、慌てながらぶっきらぼうに謝ってくる。そして、



「大好きに決まってますわ!」



次には自信満々にそう言い放った。…なんか既に恋以上の感情抱いてへん?こいつ。まぁもうええか…好きにさせとこ。未だふてくされとる財前を横目に、俺はさっさと練習を始めることにした。

亜梨沙さんすんません、これからずっと迷惑かけることになりそうですわ。
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