05

「ほんと?優勝したの!?」

「おかげさまで」

「わー!凄い凄い!おめでとう!」



暑さが目立つようになってきた今日この頃。最近皆お店に来てなかったのと、ユウジ君が朝練があるから一緒に登校出来てなかったのが関係して、私は皆の近況を把握していなかった(昼休みも練習してたのか屋上には来てなかったし)。でも、久しぶりに聞いたその報告はとても嬉しいもので、思わず私は拍手を起こしてしまった。府大会優勝だって、凄い!



「今日は1人で報告に来てくれたの?」

「ほんまはあいつらも来たい言うてたんですけど、なんかどんちゃん騒ぎ起こしそうな気がしてなぁ。さすがに打ち上げに此処は使うたらあかん思て、今日は俺1人で来ました」

「あはは、なるほどね」



ちなみに、今日1人でその報告に来てくれたのは蔵君だ。確かにこんな小さな甘味処で皆が大騒ぎしたら、私はともかく他のお客様とか店長達が困っちゃうもんな。しかも打ち上げできるほどのメニューもないし、皆からしてもつまんないよね。



「て言うても、多分打ち上げ後とかに来ると思いますわ」

「え、ほんと?興醒めしちゃわない?」

「何言うてはるんですか、俺達が1番好きな店言うたら此処ですよ」



が、そんな私の考えを覆すように、蔵君は爽やかな笑顔でそんなことを言ってくれた。う、嬉しい。蔵君めっちゃ輝いて見えるよ、てかむしろ本当に輝いてるよね。

1番好きな店、かぁ。私はただのバイトだけど、その言葉はさっきも言った通りすっごく嬉しいもので、もはや照れる領域までいっちゃう。だから私はそれを悟られないようにすぐに新しい話題を切り出した。



「じゃあ、打ち上げ後のシメとして来てね」

「関西大会、全国大会とまだありまっからなぁ。たくさんお世話になりますわ」

「新メニュー開発も頑張らなきゃなー」



それにしても、皆のうちの誰かが1人で来たことなんて今回が初めてだから、ちょっと違和感。カウンター席に座ってあんみつを頬張ってる蔵君はそんなこと少しも思っていないんだろうけど。ていうか蔵君私服だ!



「いつもと雰囲気違うねー」

「ん?あぁ、いつも制服かジャージやったからなぁ。今度皆で遊びにでも行きましょか?」

「それ楽しそう!行こう行こう!」



カウンターから身を乗り出してその誘いに食いついた私に、蔵君は目を細めて優しく笑った。この際、私の方が年下みたいとかいうのは気にしないでおく。



「あいつら言うてましたよ、はよ此処のモン食べたいーて。あと亜梨沙さんにも会いたいーて」

「皆が来ないから店内静かだったよー、言っちゃえば寂しかった」

「全国行ったらもっと長い日数東京と行き来することになるから、あいつらも我慢出来るか心配ですわ」

「遠くから応援してるね」



そう言えば蔵君はまた優しく笑い、そして何かを思い出したようにあ、と声を上げた。それに対し私は首を傾げて反応する。



「亜梨沙さん、プリクラ交換しましょ」

「え、どうしたの女子高生みたいなこと言っちゃって」

「この前初めてあいつらと撮ったんですわ。小石川ちゅー此処には来たことあらへんウチの副部長も写っとるんやけど、これ」

「おぉー!」



ふいに財布から蔵君が出したプリクラには、画面いっぱいにぎりぎり全員入っている、窮屈そうな、それでも楽しさと仲の良さが伝わってくる皆が写っていた。この前初めて聞いたけど、千里君は3年になってから転入してきたらしい。なのにもうこんなに仲良しなんだからほんとに羨ましいなぁとつくづく思う。

で、交換と称したわけだから私のも渡すべきなんだろうけど、なんせ今は仕事中だ。わざわざプリクラだけを取りに裏に行くわけにも行かない。だから次来た時にはちゃんと用意しておくことを約束して、蔵君はそのまま帰って行った。



「(…見てるだけで癒されるー)」



さーて、これどこに貼ろっかな!
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