「うんまあーー!!これうますぎやで亜梨沙ー!」

「そっか、良かった」



そう言って金太郎さんの頭を撫でる亜梨沙さんは凄く笑顔で、それを見てるアタシ達まで思わず笑顔になった。

食べてたもんを落として落ち込んどった金太郎さんに亜梨沙さんが持ってきたのは、今度出す予定の新メニューとかいうものやった。ほんまは店員同士で食べながら話し合って決めることやと思うんやけど、多分気遣ってくれたんやろねー。ほんま良い人やわぁ!



「堪忍なぁ亜梨沙さん、金ちゃんのこと気遣ってもろて」

「ううん、お客さんに試食してもらいたかったしちょうど良かった。むしろありがとね」



亜梨沙さんは普段はそれこそ普通の女子高生なんやけど、ふとした時急に大人っぽくなる。これがアタシ達中学生との差なんやろなぁ、てつくづく思う。



「さすがやなぁ、亜梨沙さん」

「ユウくんは亜梨沙さんの何を知っとるん?」

「…手厳しいで小春ぅう」



縋ってくるユウくんは置いといて。食べ終わった金太郎さんが調子乗っておかわり!、て言うたらさすがに蔵リンが頭を叩いた。それを見て亜梨沙さんはやっぱり楽しそうに笑っとって、こんなうるさいアタシ達が常連なんてお店側からしたら迷惑やと思うのに、不思議やなぁ。



「何考えてると?」

「んー?こんなアタシ達に優しくしてくれるなんて不思議な人やなぁ思て」

「確かにそうっすね」



その時、向かいにおる千歳と隣におる光に話しかけられた。亜梨沙さんは既に違うお客さんのとこに行っとるから、この会話は聞かれてへん。



「亜梨沙優しい!ワイ亜梨沙大好き!」

「せやな、良かったな」

「金ちゃん、それ餌付けやで!」



謙也がからかうように言えば金太郎さんもムキになって反抗して、それを蔵リンが呆れた様子で止めて。この光景も、まだ金太郎さんがアタシ達の中に入って月日は短いけど、だいぶ見慣れたもんになったわー。



「多分これからもっと世話になるばい」

「ま、しゃーないっすわ」

「せやねえ…」

「ちゅーかもう19時過ぎやん!亜梨沙さーん、一緒に帰りましょー!」



そこで、立ち直ったユウくんが大きめの声でそう言えば亜梨沙さんはまた笑顔でわかったー!言うて、そのまま仕事に戻った。このやり取りは少し前から見られるようになったもんで、多分、夜道を女の子1人で帰らせない為に揃いも揃って居座ってるんやないかとアタシは思っとる。



「えーワイも亜梨沙と一緒に帰りたいー」

「金太郎はんは家逆方向やからあかん」

「せやで、ユウジがおるから大丈夫や」



ほら、やっぱりせやった。

そんな感じで時間を潰しとったらあっと言う間に時間は過ぎ、亜梨沙さんが着替え終わるのを外で待つ。その時、隣で妙にそわそわしとるユウくんを見てアタシは思わず顔をにやにやと歪ませた。



「ユウくん」

「なんやぁ?小春」

「亜梨沙さんえぇ人やからな、慎重にいくんやで」

「んなっ…ななな何言っとんねん!俺は小春だけや!」

「アタシは嫌よー」



ほんまに図星なのかはまだようわからへんけど、別にほんの冗談のつもりやったのにユウくんったら顔真っ赤や。ただ単にユウくんは女の子に慣れてないからかもしれへんし、まだまだ決定づけるには早いけど、でも。



「待たせてごめんね!」



それでも、亜梨沙さんがアタシ達の中で必要不可欠な存在になるのにそう時間はかからへんことを、多分全員が心のどこかで感じとった。
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