各々のお弁当を食べ終えた私達は、食後のデザートである柏餅に手をつけ始めた。3人とも美味しい美味しいと言いながら食べてくれて思わず頬が緩む。普段は冷静な幸江が沙希と取り合いしてるところを見る限り、お世辞ではないみたいだ。それにしてもこの2人可愛いなぁー。



「あ、幸江、テニス部の子達やー」

「テニス部?」



その取り合いに終止符を打ったのは、香菜子のひょんな発言だった。隣の学校、即ち四天中を見ながらそう言う香菜子に合わせて、私達も視線をそっちに向ける。



「(…あれ?)」

「ほんまや、相変わらずうるさい連中やな」

「なーなー、中学のテニス部がどないしたん?」



四天出身の香菜子と幸江とは違って沙希は違う中学から来たから、抱いた疑問をすぐに2人にぶつけていた。でも、私がそのことに集中するなんてことは出来るはずがなかった。

や、だってあれ皆じゃん。



「亜梨沙ーー!!!」

「…あれ?亜梨沙?ごっつ叫ばれとるけど?」

「なんやーー!!!」

「沙希、なんであんたが答えるん」

「(…こんなことってあるんだ…)」



四天の屋上とは隣接してるから、少し大きめの声を出せば充分に会話が出来る。今私の目線の先には給水塔でお弁当を広げている皆と、更には私の名前を大声で呼んでいる金ちゃんがいる。元々学校が隣ってだけでも凄いのに、まさか更にこんな偶然が降りかかってくるなんてかなり予想外だ。

とりあえず、どういう関係?、と質問責めしてくる3人に皆と仲良くなった経緯を簡単に話してから、次は皆に意識を向ける。



「亜梨沙さーん!こっちいらっしゃいよー!」

「ごめーん、それはさすがに無理ー!」

「相変わらずクネクネしとんなぁあのオカマ」



そうするなり急にそんなことを言ってきた小春に正論を返すと、幸江は横で結構辛辣な言葉を淡々と吐いた。クネクネとかオカマとか言いたい放題…!ていうか皆やっぱり有名だったんだなぁ。あれだけキャラが濃ければ当たり前っちゃあ当たり前だろうけど。



「凄いなー亜梨沙、あいつらが女にこない懐いとるとこ初めて見たで」

「年上の女の魅力ってやつやん!亜梨沙やるー!」

「フゥフゥー!亜梨沙フゥー!」

「ちょ、沙希、お餅落ちる!」



妙にテンションが高くなった香菜子と沙希はさておき、皆はひたすらこっちに向かって手を振ってくれているから私も振り返す。て、あれ?金ちゃんコケた…?



「…せっかく亜梨沙が作ってきてくれたんやし、はよ食べるで」



直後、断末魔の叫びが響き渡る。…私達はなんも見てない、知らない。コケた金ちゃんのせいで巻き添えを食らった皆が給水塔から落ちたことなんて、ただの幻覚だ。だから香菜子の提案にすぐさま乗った。



「亜梨沙ー、あいつら白目剥いて倒れとるでー!?」

「沙希、まだ柏餅あるから食べよう」



どうやら、今日から毎日お昼は賑やかな時間を過ごすことになりそうです。
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