「マジでMiuと結婚したんだな」

「何回言えばわかんだよ」

「百聞は一見に如かずってやつだ、今やっと信じれた」



俺と泉が結婚してから、2年の月日が経った。

結婚直後は確かに大変な事ばかりだった。泉は芸能人なだけあって週刊誌にはあることないこと書かれたし、俺も俺で跡部財閥の肩書きのおかげでマスコミが自宅まで押し掛けてきたりもした。だが、それを乗り越えられたからこそ今の幸せがあると言っても過言ではない。



「小堺さん、紅茶とコーヒーどっちにしますか?」

「あ、コーヒーで」

「わかりました」



そして今日は、留学時代に仲良くなった小堺がうちに来ている。とは言ってもそこまで長居は出来ないようだが、なんだかんだ連絡は取り合っていたものの直接会うのはあの日、こいつが先に帰国した日以来だ。



「そういえば跡部、お前会社の方はどうなんだよ」

「親父の跡を継ぐのはまだ先になる。が、この前でかい仕事を任された」

「本当か?奇遇だな、俺も昨日任されたんだよ!俺達が留学で培った能力が発揮される時がやっと来たかー」

「そうだな」



相変わらず楽天家な小堺は、昔とちっとも変わっちゃいねぇ。俺はそれに安心し、小さく笑った。

今の会社は財閥に所属しているもので、まだ俺個人のものではない。が、近い将来親父の跡を継ぐのは俺だ。そうなるまでは結婚はしないと最初は決めていたが、それも泉に会う前までの話で、いとも簡単に覆された。ずっと一緒にいたいという気持ちが膨らみすぎた結果だ。



「はい、どうぞ」

「ありがとう」

「泉、お前も座れよ」

「うん」



泉が淹れたコーヒーを飲みながら、小堺と3人で雑談をする。この新鮮な空間は想像していた以上に楽しく、いつまでも話題は尽きなかった。



「泉ちゃん、跡部の何処に惚れたんだ?」

「…此処で言わなきゃ駄目ですか?」

「照れてるー可愛いー!」

「あんま妙なテンションで接してんじゃねぇよ」



それからも小堺はプロポーズはどんなシチュエーションだったのかだとか、遠距離の間はどうしていたのかだとか、色々な事を質問責めしてきた。それに俺は呆れながら適当に返していたが、泉は1つ1つに律儀に対応していた。照れるくらいなら相手にしなきゃいいのに、変な所で真面目だ。



「あーあ、もうラブラブすぎてお腹いっぱいって感じだわ。という事で俺は仕事行くぜ」

「玄関まで送りますね」

「またな」



そうしている間に時間はあっという間にすぎ、小堺は帰って行った。次会うのはお互いの仕事が成功してからだろう。



「あ、景吾!私出かけるとこあるんだった、行ってくる」

「着いてくか?」

「ううん!大丈夫!行ってきまーす!」



小堺が帰ってリビングで一息吐いた後、急に泉は妙に焦りながらそう言って家から出て行った。

実は、こんな泉を見たのは今日が初めてじゃない。ここ1週間くらい、2人でいる時に若干挙動不審になる事が多々あった。本人は平然を装ってるつもりみてぇだが、いかんせん俺の眼力を侮ってもらっちゃ困る。

泉のいなくなった家の中で一体どうしたんだ、と考えながらも、俺は仕事を進める為にデスクに向かった。
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