「あ、あったあった!4番ゲートよ」

「あの、スタッフさん達は?」

「機材の持ち込みとかあって時間かかるからもう先に行ってるわ。私達も乗りましょ」

「はい!」



そうして出発時刻20分前。思ったより長居してしまったお店から出て、荷物があまり無いスタッフさん達と小走りでゲートに向かう。

 じゃあね、景吾。

届くはずのない声を心の中で吐き出して、お財布から搭乗券を出そうと鞄に手を入れた、―――その時だった。



「じゃあな景吾!日本戻ってきたら連絡しろよ!」

「あぁ」



目の前の光景が信じられなくて、呆然とした表情で思わずその場に立ち尽くす。今あの男の人、なんて言った?景吾、って?



「泉?どうしたの?」



なんで?なんで今なの?会えなかったから仕方ない、そう諦めて日本に帰ろうと思ってたのに。思ってたのに、こんなんじゃ帰ろうにも帰れない。私の視線の先を追った北野さんも、流石に驚いたように目を瞠ってからゆっくり私の背中に手を当てて来た。



「私は先に行ってるわ。どうするかは泉次第よ」

「北野さん!」

「今は貴方が自分でどうにかしなさい。私がしてあげられるのは貴方を待つ事だけよ」



北野さんはそう言うと先に、颯爽とゲートをくぐり抜けて行ってしまった。ゲートの方を見れば絶対に目に映る、1つ奥のゲート前にいる景吾。友達の背中を最後まで見送っているのか、そこから中々離れようとしない。



「景、吾」



小さく名前を呼んでみる。いつもは景吾がいない所で呼んでたけど、今はこんなに近くで呼べてる。でも、こんな小さい声が届くはずがない。

 バイバイ。

そして私は駆け出した。ゲートをくぐり抜けて、一度も後ろを振り返らずにただ走った。声は、届かなかった。



「よく頑張ったわね」



ゲート前にいる人達からは完全に見えなくなる場所に着いた途端、まるで脆く折れた木のように私は跪いた。咄嗟に受け止めてくれた北野さんに、子供みたく必死にしがみつくのが精一杯だ。

景吾は大人になっていた。私が最後に見たあの日よりもずっと格好良くて、優しい目をしていて、愛しかった。ロスにいる事で元から格好良かった景吾は更にそれに磨きがかかったんだ。大人になったんだ。なら、それでいい。

私は自分にそう言い聞かせて、無理矢理涙を引っ込めた。ねぇ景吾、私、こんな子供な自分のまま景吾に会えないよ。会わせる顔がないよ。



「泉…?」



だから、もっと頑張るから、それまではやっぱり、お別れだね。




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