「保護者やん、俺」



ようやく晴れた顔で去ってった安西の背中を見ながら、思わず独り言を呟く。

俺達のメンバーのうちの誰かが悩んだりしとる時、それの相談に乗るんは何故かいつも俺か滝やった。まぁ相談役に適しとるっちゅーのはなんとなく自負しとるし、あいつらの為やから別に苦じゃあらへんけど、最近じゃもっぱらそれに拍車がかかっとる気がするわ。



「(どうしとるんやろ、あの2人)」



1人になった瞬間思わず出て来た考えを掻き消すように、口をぐっと噤む。正直、さっき安西に言った事に嘘の気持ちはあらへんけど、2人がほんまのほんまに大丈夫な状態かはわからん。だって連絡取っとらんし。そもそも今の2人の状態じゃ不安にならへん時なんか無いはず無いし、って俺矛盾しとるがな。

ただ、確かにあの日、跡部はしっかりと「俺の女だ」て誇らしげに言っとった。せやから俺はあの言葉を信じるしかないし、それ以外無駄に言及する気もあらへん。2人のうちのどっちかが不安に押し潰されそうになっても、俺はまた安心感を与える事しか出来へん。でも、それで2人を繋ぎ留めれるんならそれだけでも全く構わへん。



「ジロー?」

「あ、忍足」



とか思っとったら早速来たでー、えっらい沈んだ顔しとるジローが。その子供みたいにしょげた顔を、これまた親のような気持ちで覗き込む。



「忍足、俺、もうわかんなEー!!」

「ちょ、爆発せんといて」

「だって跡部超余裕な感じなんだもん!なんで!?俺ばっかちょー沈んでんじゃん!泉だって最近仕事漬けだしさ、なんで」

「落ち着き」



いきなり爆発し出したジローの背中をさすって落ち着かせれば、ジローは怒った顔からたちまち泣きそうな顔へと変化した。大学入って少しは大人になったと思ったんやけど、まだまだ子供やなぁ。ま、同い年やけど。



「大丈夫や、ジロー」

「大丈夫って何?それって2人が決めた事だから!?2人が納得すれば忍足は全部納得するの!?」

「うっわーさっき誰かさんにも同じような事言われたわ」



何シンクロしとんのや、ってツッコミたくなるくらい繰り返された言葉に苦笑しつつも、話を続ける。



「あの2人は全部理解してるはずや。上手くいかへん事があるのも、全部」

「全部?」

「おん」



話し続けているうちに、なんとなくジローの表情は和らいでいく。



「俺、よくわかんないんだ。なんで跡部も泉もあんなに強がるのかな。なんで辛いのに離れるのかな、全然わかんないよ」

「逆に2人やからこそ出来たんやろ。普通やったら離れるっちゅー決断した所で、こんな状況半年も経たずに終わっとるわ」

「確かに、そうだと思うけど」

「…ま、アホなんは違いないけどな」



俺の言葉が予想外だったんか、ジローは目を軽く見開かせて「え?」と問い返してきた。



「俺らにこない心配かけて、ほんまアホやなーて」



数秒後に「だよね」と小さく返事をしてきたジローの頭を、軽く叩くように撫でてやる。それから俺達は何か話す訳でも無く、ただただその場をやり過ごした。

ほんまはジローも安西も、最初っから何もかも認めとったはずや。それでもわかんない、言うてたんは多分、俺達以上にあの2人が平気な素振りをするからや。跡部、泉、自分ら不器用すぎやわ。慣れてへん事すんな!…たまには、甘えてきぃや。




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