例えばあの子に何かがあった時、あいつは今でも誰よりも速く駆けつけてあげるのかなぁ。



「なーんてね」

「どないしたん?」

「別に」



陽の当たるテラスで次の講義までの暇潰しをしていると、ちょうど通りかかった忍足が隣に腰を降ろした。特にお互い話す事も無いけど、今更沈黙が気まずい仲でも無いのでどうでもいい。

景吾と泉が答えを出してから、約半年が経った。私は最初あの答えを聞いた時、色々な感情が溢れすぎてたった一言しか景吾に言葉をかける事が出来なかった。泉に至っても同じだ。あの子の決意をうん、そっか、と一言で返すことしか出来なかった。

私は、信じられなかった。今思えば2人なりの考えがあって、それが合致した上での答えなんだろうから少しは理解は出来る。それでも、2人に限ってこんな事になるなんてちっとも予想してなかったから、その反動は中々大きかった。



「また考えとるんか」

「は?また、って」

「わかるわ、自分の顔見とったら」



別に、普通にコーヒー飲んでるだけなんだけど。こういう面で(いや常日頃からか)忍足はムカつく、気付いて欲しくない事にもなんでも気付いてしまう。



「しゃーない、なんて言い方したくあらへんけどな。それしか言えへんわ」

「…まぁ、そうなんだけど」

「跡部はちゃんと迎えに来る言うたし、大丈夫やろあの2人なら」

「またそう信じて良いのかねぇ」

「なんやババくさいな」

「うるさいわ」



相変わらずの減らず口はもう放っておく。…2人なら大丈夫、って言っても、その結果がこれじゃあちっとも信憑性が沸かない。

私のそんな気持ちを読み取ったのか、忍足は苦笑しながら新しい缶コーヒーを手渡してきた。



「離れる事が悪い結果だと、俺は思わんで」

「それって2人が決めた事だから?2人が納得出来るならそれでいいって事?」

「ちゃうって。別にあいつらは、離れてても好きでいられるかーなんてくだらん賭け事をしとる訳やない」

「まぁ、ね」



忍足の言い分はなんとなくわかる。でも、それはそれ、これはこれ、だ。



「むしろ、あの2人やから出せた答えやねんなぁ」

「?」

「お互いがお互いを好きでいられるってちゃんと信じとるんや。せやから、今は自分のやらなあかん事に夢中になってても大丈夫や、ってな」


確かにそうなのかもしれない。好きだから一緒にいるとか、付き合ってるからそれをいちいち表現するとか、そういう感じじゃない。あの2人は。



「なんかそう考えたら安心してきた」

「せやろ?全部わかっとるんや、あいつら」

「馬鹿忍足、私の半年間返せ」

「どんだけ悩んでたん、かわえぇ奴やな」

「うっさいキモい」



高校の頃はこいつに助けられる事なんて無いと思ってたから、癪っちゃ癪だけど、ま、



「ありがと、忍足」



今は感謝しておくか。

景吾、泉、今なら私、あんた達に言える気がするよ。あんた達なら大丈夫だ、って。だからそれまでの間一緒に頑張ろう、って。

忍足から貰ったコーヒーを一気飲みして空き缶をゴミ箱に投げ捨てた後、ちょうどポケットに入っていた飴をそいつに投げて、私はその場を去った。後ろからは「これジローが持ってたやつやろ」とかいう文句が聞こえたけど、その後に小さく「きばりや」と言われ、ほんっといちいち癪に障るなぁと思った。
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