寮に帰るなりまずはパソコンの電源を入れ、起動する間にさっさと部屋着に着替える。学校から出された課題もなぁなぁに机に置いて、とりあえずメールのチェックをすれば新着メッセージが何件かあり、その中でも真っ先に目に入った人物からのものをまず開封する。

 “今ジローとランチ食べにきてるの。結構穴場でね、学校の近くにあるんだ。美味しいし落ち着くよー、景吾が日本に帰ってきたとき案内するね。”

そんな文章と一緒に画像も添付されており、美味そうにケーキを頬張ってる2人の姿につい頬が緩む。泉は全くと言って良い程メールに絵文字を使わないが、それでもコイツの優しさは充分に感じ取れるから俺は好きだ。楽しみにしておく、とだけ返信をし、他のメールも適当にチェックする。



「(そういえばこんなの撮ったか)」



一通りそれらが終わってから適当に携帯を弄っていると、画像フォルダから今日撮った写真が出て来た。きっとアイツが好きだろうと思って撮った、俺から見ればなんの変哲も無い街並みの写真。いつだか一緒に買い物に行った時も、興味を示す写真やポストカードは決まってこういう日常の風景だった。早速送ってやろうと思いまた携帯の操作を始めた所で、珍しく2件同時に新着メッセージが届いた。だから先にパソコンを弄る。

 “返事いつもより早くてちょっとびっくりした!今はジローとはバイバイして、香月と大学の食堂にいるよ。”

1件目は泉で、また食ってんのかコイツと思いながらも2件目に目を通す。

 “可愛いでしょ。”

たった一文だけで送られてきた香月からのメールには、前に食堂のメニューでお気に入りだと言っていたプリンを食ってる泉の画像が添付されていた。本当にまた食ってた事には苦笑しつつも、保存だけはしっかりしておく。それから各々に返事をすると、どうやら次の講義が始まるまでまだ時間があるらしく、俺はそれまで時間が許す限り泉とのメールを続けた。今日撮った写真を送ったら、案の定喜んでいた。

とそこでふと時計を見れば、時刻はあっという間にいつもならもう寝る時間までに迫っていた。だがまだ課題も終わって無ければシャワーだって浴びていない。時間配分を間違えた事に溜息を吐きつつも、まぁ泉と連絡を取れたから良いか。



「(…本当に良いのか?)」



が、そう思ったのは一瞬だった。むしろ一瞬でもそう思った自分がおかしい。とりあえず今はやるべき事を最優先にするが、それらが全部終わりベッドに寝転んだ時、また俺の中には1つの疑問が浮かび上がった。

 生活の中心が、全部泉じゃねえか。

授業中は流石に集中しているにせよ、街を歩いている時も、自室に帰って来てからも、優先順位が少し違うのではないか。いつもより1時間も寝る時間が遅くなった現状を見つめ直して、改めて思う。今の時点でこんな状態なのに、もしも月日が経ってこれがもっと抑えられなくなったら?誰と居る時も何をしている時も、泉を忘れられなくなったら?



「…寝るか」



その先を考えるのが怖くなった俺は、電気を消して無理矢理寝る事にした。今はまだ知りたくない。考えたくない。それが何を示しているかなんて、知らない。

そんな風に逃げてばかりいたから、俺はその答えがすぐそこまで来ている事に気付けなかった。




 2/2 

bkm main home
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -