伝えたい想い

「何処行ったのかね、あの馬鹿」



頬杖をつきながら隣の空席を見つめていると、香月にはお見通しなのかそう話しかけられた。



「誰とも連絡取れないんだもんね」

「俺、めっちゃ電話もメールもしてるのに、全然答えてくれない」



景吾の家でお泊まりをしてから、1週間が経った。お泊まり後何日かはまだ連絡が取れたのに、今週に入った途端全くの音信不通で皆困っている。確かに今週から景吾の家に遊びに行けなくなるとは言っていたけど、それとこの状況がどう関係するのかは誰も分かりやしなかった。



「あいつんとこの執事さんにも直接聞いてみたけど、ぼっちゃんからそのうち直接伝えられると思いますの一点張りだし。何やってんだか」

「久しぶりの登校日なのにね。どうしたのかな」



あぁ見えて学校大好きな景吾が、体調不良以外で欠席するのは考えられない。でもそれだったら一言くらい連絡があってもいいはずだし、とキリの無い答え探しをするのもいい加減疲れて来た。

ここ最近、仕事が無い時以外はほぼ毎日皆に会っていたから、その中の1人でも欠けるとなると凄く物足りない気持ちになる。ましてや、それが景吾なら尚更だった。



「泉、携帯鳴ってる」

「あ、ごめん」



意識が飛び過ぎて携帯の振動にも気付かなかった。そのせいで不安そうな目を向けて来た香月とジローから目を逸らして、届いたメールを確認する。



「あとべ、じゃないよね?」

「うん。優兄からだ」



メールの内容は、久しぶりにご飯でも行かないかという優兄からのお誘いだった。景吾じゃない事が分かるなり机に突っ伏しちゃったジローに苦笑しつつ、良い気分転換になれば良いなとは思うので承諾の返事を送る。



「どいつもこいつも目に見えて元気ないね。あんたも含めて」

「なんか気が抜けちゃって」

「死んだ訳ではないにしても、こうも音沙汰無しだと腹立つわ」



憎まれ口を叩くのは仲の良い証拠だと知っているので、「まぁまぁ」とだけ言っておく。こう見えて心配してるんだろうから、やっぱり香月と景吾はちょっと似てるのかもしれない。



「あの馬鹿、居場所分かったら張っ倒してやる」



そして、そんな風に言える余裕がある香月が、ちょっと羨ましかったりもした。
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