学祭スタート!

「始まるぜ、前夜祭!」



熱気に包まれる体育館。跡部の指パッチンと生徒達の盛大な歓声により、前夜祭はスタートした。



「凄い盛り上がりだねー!」

「そっか、あんた氷帝の学祭初体験だもんね」

「最初で最後になっちゃうけど」



そんな会話を交わしている泉と香月は今、前夜祭が行われているステージを後ろから遠巻きに見ている。ちなみにこれは立ち見となっているので、特に前列にいる生徒達の盛り上がりは尋常じゃない。



「あ、向日君クラスアピール出てるよ」

「相変わらず跳ぶなぁ」



前夜祭の内容は主に、各クラス・部活の宣伝、有志による歌やダンスなど様々だ。



「お、いたいた」

「宍戸君!」

「ようやるなー岳人も」

「うちのクラスは芥川と景吾がなんかやってくれるでしょ」

「あの2人が組んだら商売繁盛間違いなしだね」



2人の元にいつも通り宍戸、忍足、滝がやって来て、それぞれ会話を交わしながらも視線はしっかりとステージに向ける。



「あ、鳳君だ!」

「日吉と樺地、完全に巻き込まれとるやん」

「長太郎の奴…」



次の部活宣伝には2年生3人組が登場した。真中の鳳は、日吉と樺地を両腕に明るくスキップしながらアピールしている。両脇の2人にとっては傍迷惑な話だが、鳳はとても楽しそうに振舞っている為女子生徒の掴みはばっちりだ。



「待ってますから皆さん絶対来て下さいねー!」

「仲良しだなぁ3人共。可愛いー」



終いに鳳は2人の腕を持ち、そのままブンブンと一緒に手を振った。その屈託のない笑顔に女子生徒は更に声援を高める。

そうして次に幕の後ろから入れ替わりで跡部と芥川が登場すると、いよいよ体育館内にははち切れんばかりの声援が男女共に響き渡った。



『跡部!ジロー!跡部!ジロー!』

「やるねー。ジローも仲間入りしてる」

「俺こんなコール初めて聞いたぞ」

「うわー芥川楽しそー」

「親子っちゅーか、兄弟っちゅーか」



芥川は自分の名前もコールされている事が嬉しいのか、跡部の肩に乗り、いわば肩車状態でアピールを始めた。身軽な芥川を肩車する位は容易いのだろう、跡部はフラつく事なく淡々とそれをこなしている。2人の仲睦まじい姿を見て、泉達も思わず笑顔になった。

2人のアピール自体はすぐに終わり、その余韻を引き摺ったまま他の宣伝にも目を通していると、そこに向日、芥川、2年生3年組が合流した。



「先輩、俺達のアピール見てくれました!?」

「ばっちり見たよー可愛かった。日吉君と樺地君もお疲れ様」

「とんだ巻き込みですよ」



呆れながら言う日吉に対して、樺地は満更でもないのか普段より表情が柔らかい。しかし泉は跡部がいない事に気付き、それを向日に問いかけるとこんな答えが返って来た。



「跡部は有志ステージにも出るからまだ裏にいるぜー。なんか歌うんだってよ!」

「中学の頃から毎年出てるからね。今年は何を歌うのかな」



滝の言葉に全員であれやこれやと予想を始める。そうこうしているうちにステージの照明が一度暗くなり、次の催し、すなわち有志ステージ開幕への準備が始められた。

色とりどりの照明、賑やかな音楽、テンションの高い司会者。その全てが生徒達のボルテージを上げる着火剤となっており、



「俺様の美声に酔いな!」



そんな中トップバッターで姿を現した跡部には、いつも以上に大きなキングコールがなされた。



「最近あの台詞あんま聞いてなかったけど、あいつまだあのキャラだったんだ」

「忠実だねえ、景吾は」



お祭り男の歌声が、瞬く間に体育館中に広がる。
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