楽しみでいっぱい

「ちょっと跡部君!そっちじゃないこっちー!」

「人遣い荒いな」

「景吾頑張れー」



学祭実行委員の指示に大人しく従う景吾は、いつもと違って言われた事を淡々とこなしている。裏方に回っている景吾なんて新鮮そのものだ。



「泉、道具取りに行くわよ」

「はーい」

「俺も行くー!」

「芥川君はこっち!」

「Aー!?」



賑やかな声が飛び交う教室を出て、香月と教室の装飾について色々案を出しながら廊下を歩く。廊下も廊下でこれまた賑やかで、学校全体が学祭の雰囲気に呑まれつつあるこの状況を、私も浮足立った気持ちで過ごしている。

学祭まで後1週間。いよいよ準備も大詰めです。



「脚立に模造紙にボンド、それから後はー」

「この道具箱全部持ってっちゃ駄目かな?」

「あー1つくらい持ってっても支障ないよね。いっか。じゃあ泉それ持って、私脚立持つから」

「わかった、ありがとう」



さりげなく重い方を持ってくれた香月に感謝しつつ廊下を出ると、そこで見知った顔が1つ。



「あ、侑士だ」

「2人共おったんか。安西さん、脚立担いどる姿似合っとんなぁ」

「それは褒め言葉なの?」



ドアの前でちょうど行き違いになったのは、気だるげにあくびをしている侑士だった。どうやら侑士も実行委員に使われてるみたいで、ランキングを書く為の模造紙を取って来るよう頼まれたらしい。

そんな風にしばらく雑談していると、バタバタと騒がしい足音が耳に入って来た。



「うおっ、なんでこんな集合してんだ!?」

「何や岳人かいな。もうちょい静かにしぃや」

「いっやー、何か準備楽しくてよ!」

「向日君らしいね」



なんだか知らないけど、侑士が居る所に向日君が来る率が高い気がする。流石仲良し。そんな向日君は準備が楽しくて仕方ないらしく、私達との会話もなあなあで文字通り風のように戻って行った。



「じゃ、侑士は部活でな!安西と泉は明日ー!」

「うん、バイバイ」



ちなみに部活動に所属している生徒は、放課後1時間だけ教室準備への参加が出来る仕組みになっている。とはいえこれは目安としての規則だから、もっと短い、あるいは参加権すら無い部活もあったりする。テニス部は目安通り1時間で切り上げるみたい。



「香月、準備期間中は後輩指導行くの?」

「んーん。キャプテン達が張り切ってるし、後輩のマネージャーだってもう私がいなくても仕事出来るし」

「香月の後輩、凄い香月に懐いてたよねー」

「ま、一応可愛い後輩っていう事で」

「愛されとんなぁ」



私達3人は教室が隣だからそのままマイペースに歩いて、到着した所で別れた。「忍足君戻って来るの遅い!」って怒られてる声を聞いて、思わず香月と顔を見合わせて笑った。
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