楽しんだモン勝ちや!

「珍しいなぁ」



研修旅行の振り替え休日である今日は、朝から家の掃除や洗濯に時間を使っていた。ようやくそれらが終わったのであー疲れた、と紅茶を飲みながらソファに座ってると、突然携帯に1本の電話が入った。しかも相手は中々予想外な人物で、思わずそんな独り言を呟く。



「もしもし?」

「泉ー!元気だったぁ?久しぶりね!」

「うん、久しぶりだね」



相変わらずのあまーい口調につい笑いながら返事をする。賑やかな皆の声も一緒に連れてかけてきたのは、四天宝寺の小春だった。



「泉、明日は何してるの?」

「今の所何も無いかなー。ちょうど一昨日研修旅行から帰ってきた所で、振替休日なの」

「やだもぉーグッドタイミング!蔵リン!泉暇だって!」



元気な声により一層磨きがかかったかと思うと、そのまま小春はフェードアウトして次に聞こえたのは蔵ノ介の声だった。甘い声から爽やかな声まで、なんだか忙しいなぁ。



「久しぶりやな。突然なんやけど、明日暇なら大阪来いひん?」

「え、いいの?」

「交通費は俺らで出すし、遠慮いらへんで」

「ううん、大丈夫。私も行きたいし」



突然のお誘いに少しびっくりしたけど、嬉しい事に変わりはない。2つ返事で承諾した後は蔵ノ介と待ち合わせ場所・時間などを決めて、最後に皆の「待っとるで!」という声で電話を切った。

まさかこんな急に予定が入るとは思ってもいなかったものの、皆に会うのは合宿以来だから純粋に楽しみだ。それに大阪観光も出来る。振り替え休日は明後日までだし、次の日朝から学校に行く必要も無い。滅多に無い絶好の機会に心を踊らせつつ、気が早いけど明日の用意を始める事にした。



***



「泉ー!!」



そして翌日。

無事大阪駅に到着した泉は、自分に気付くなり一目散に走り寄って来た遠山の体を全身で受け止めた。小さい割に力が強いので踏ん張るのに精一杯だ。



「久しぶりやなぁ!」

「謙也ー!本当にね!」

「髪伸びましたね。似合ってますわ」

「ありがとう」



彼らの優しい出迎えに、長時間電車に揺られた事で疲れていた体も癒される。



「急ですまんなぁ。来てくれてありがとさん」

「こちらこそお誘いありがとう」

「アタシ達沢山案内しちゃうから、着いて来るのよー!」

「泉!小春に近寄りすぎたらあかんで!」



やっぱり四天宝寺って、キャラの位置づけみたいなのがしっかりしてるよなぁ。そんな事を頭の中で考えつつ、先頭を歩く遠山に引っ張られながら駅を離れる。



「何処に行くの?」

「色々考えたんだけど、やっぱり久しぶりだしゆっくりしたいじゃなぁい?」

「せやから、まず商店街で大阪を堪能した後!」

「全員で部長んち行って、ホームパーティー開きましょ」



金色の言葉に、謙也と財前が続く。



「楽しそー!でも、こんな大勢で行って迷惑じゃないの?」

「余裕や!白石んちは豪邸やで、ご・う・て・い!」

「大げさや金ちゃん」



さも自分の事かのように自慢する遠山に対し、白石は軽く苦笑する。それでも石田までもが大丈夫だと力説するので、泉はお言葉に甘えて彼の家にお邪魔する事を決めた。そうして今日1日の流れを確認した所で、彼らは早速商店街へ繰り出すべくそちらの方向へ足を進め始める。気分はまるで遠足だ。



「そういえば、何で今日休みなの?」

「建校記念日や」

「なるほど」



活気溢れる雰囲気に、好奇心が止まらない。
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