研修旅行スタート!

「本当に綺麗だね!」

「うん。それは良いんだけど」

「暑いな」



気だるげに言った香月と景吾の言葉を吹き飛ばすように、ジローは大きな荷物を持ってるにも関わらずはしゃぎ続ける。

研修旅行、別名思い出旅行in沖縄。ようやく到着した目の前の景色は、東京の忙しさとは打って変わって何処までも青空が澄み渡っています。



「うわぁああ何処もかしこもシーサーだらけだC!あ、あとべあっちに紅芋タルトある!」

「買ってやるから静かにしてくれ」

「ひゃっほーい!」



言われた傍からジャンプして喜んでいるジローを見て、2人は呆れたように溜息を吐く。最近東京は寒くなって来た所だったから、こんなにも暑いと気温差にやられちゃうのも仕方ない。でも、子供の様に目をキラキラさせているジローは、私にとっては笑顔の源にしかならなかった。可愛いなぁ。



「早速ジローが暴れてんな」

「予想せんでもわかっとったわ」

「季節外れの夏バテだね」



そうしていると宍戸君、侑士、ハギも後ろから来て、結局全員集合しちゃう所が本当仲良しだなぁなんて感じる。ちなみに向日君は景吾に紅芋タルトを買って貰っているジローの隣に行って、ついでにせがんでるみたいだ。ちゃっかりしてる。



「泉」

「ん?あ、水買ってくれたの?ありがとうわざわざ」

「ん」



ジローと向日君を先頭に騒ぎながら歩き始めると、いつの間に隣に来ていた景吾はそう言ってミネラルウォーターを手渡してくれた。ちゃっかり沖縄限定のパッケージを買ってるあたりがちょっと可愛い。

場所を移動した後はさっき到着したバスに順々に乗り込んでいく。先生の指示なんて皆耳に入っていないのか、バス乗り場は人で賑わっていた。そこでちょっと転びそうになればすかさず両隣、香月と景吾にがっしり腕を掴まれて、あれ、なんか人の事言えないくらい子供かも?



「親子みたいだね」

「やめてよこいつが旦那とかマジで無理」

「人が言おうとした事先に言うんじゃねぇ」



夫婦喧嘩始まっちゃったー。



***



「うわ、何だこれ!すっげぇー!」

「あとべんち並だC!」



バスに揺られる事小1時間、彼らは無事に宿泊場所であるホテルに到着した。流石氷帝なだけあってか、子供2人組が言った通り外観・内装含めかなり豪華だ。自分の家と比べられた事で跡部は些か不満顔だが、そんな事を彼らが気に掛けるはずがない。



「それぞれしおりに載っている部屋に荷物を置いた後、30分後には大ロビーに集合する事ー!」



メガホンを通して言われた学年主任の呼びかけには明らかに浮かれたような声が返される。エレベーターの中までもが煌びやかなおかげか、生徒達の感嘆は何処の場所でも効く事が出来た。

泉と香月は勿論同室の為、部屋がある階に着くなり彼らとは一度別れる。



「えぇー!」

「今年はまたえらい金かけたねぇ。景吾支援したのかな」



カードキーを使い開けた扉の向こうには、思わず立ち止まってしまうくらいの景色が広がっていた。まさに南国のリゾートをイメージしたような内装は、東京ではまず味わえない空間だ。



「雲行きばっちりだね!」

「そうね」



しばし部屋の中を物色している間にも集合時間が迫ってきたので、2人は制服から私服に着替えその場を後にした。足取りが軽いどころか今にも飛んでいきそうな勢いの泉を見て、香月もまた静かに微笑んだ。
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