もはや中毒

今日は朝早くから仕事だけど、終わるのは昼過ぎだしその後はオフだから特にハードスケジュールという訳ではない。ただ、スタジオの場所が東京じゃなく神奈川ってことが唯一の難点だ。北野さんに朝早くから此処まで迎えに来てもらうのも気が引けたから、今私は1人で電車に揺られている。



「ふぁーあ…」



人気の少ない電車はその分睡魔が容赦なく襲ってくる。それに私は対抗出来なくて、そのまま浅い眠りについた。

それでも寝過ごすことはなくちゃんと神奈川に着き、下車した時。私の視界には、見覚えのある銀髪が目に入った。銀髪なんて早々いない上にあの痩身となれば人違いをするはずもなく、逸る心を抑えつつその背中に近付く。



「おはよう!」



ポン、と肩を叩き挨拶をすると、雅治は案の定目を見開かせながらおぉ、と驚いたように返事をしてきた。



「これは驚きじゃの」

「やっぱり?」

「心臓に悪いぜよ」



それから久々に色々なことを話していると、いきなり雅治があ、と声をもらしたから、何だろうと思って後ろを振り向く。

あ。



「…すまん、待ち合わせしてたんじゃ」

「これは驚いたな、Miu、ではなく朝倉」

「うわーバレてるー」



振り向いた先にいたのは柳君で、当然のように今は変装をしていない為普通にバレた。もう驚く間もなくバレた。多分今までで1番あっさりしたバレ方だったから、拍子抜けして私もへらへらと笑うしかない。



「よくわかったね」

「後ろ姿の時点で朝倉ということには気付いていたがな」



データマンともなれば、1週間一緒に生活すれば体の特徴も掴むのだろうか。どちらにせよ彼は勘付いていた節もあったようで、この状況に全く持って動揺していない。だから私も気を取り直してこのことは軽く考えるようにした。いいんだ、もう景吾達に怒られても知るものか。



「これから何処行くんじゃ?」

「撮影だよ。2人はこんな朝早くから何処行くの?」

「テストが近いからな、混まないうちに図書館で勉強しにいくつもりだったが」



予定変更だ。

言葉を詰まらせたかと思えば急にそんなこと言い出した柳君に、意味が分からず首を傾げる。予定変更?何処に?と思っていると、雅治もひらめいたのか口角を上げて微笑んだ。



「社会科見学、とでも言っておこうかの」

「…え、もしかしてスタジオに遊びに来るって意味?」

「朝倉さえ良ければ俺達はそうしたいな、興味がある」



社会科見学、なるほどそういうことか。仕事の自分を見られるのは恥ずかしい気もするけれど、ここまで来て引いてくれる2人では無いだろう。北野さんは言わずもがな格好良い2人となれば大歓迎するに違いなし、いっか、行っちゃえ!

ノリと勢いに任せたこの行動は、果たしてどう出るのでしょうか。
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