合宿開始!

※合宿篇では部屋割りに目を通しておいた方が内容がわかりやすくなると思いますので、必要であれば画面メモなどをし併用して下さい。










「ふぁあー…今日かぁ」



騒がしいアラームで目が覚めた、合宿当日の朝。只今の時刻は午前5時30分。7時に学校集合だから少し早い気もするけど、変装をしなきゃいけないから二度寝はせずベッドから出る。まず朝ご飯を済ませ、それから歯を磨いて、シャワーを浴びる。

あーあ、男の子に産まれたかったなぁ。ジャージで鏡に向かって髪を結ってる自分の姿を見て、思わずそんなことを考えた。だって男だったらこんな面倒くさい思いしないで済むし、なんて、こんなことどれだけ願ったって無謀に過ぎないんだけど。

そんなこんなで、家を出た時刻は6時半だった。学校まで大体20分程度だから余裕を持って行ける。



「朝倉?」

「あ、宍戸君。おはよー」

「おう」



そう思いながらのんびり歩いていると、後ろから宍戸君に話しかけられた。朝早いのにいつも通りシャキッとしていて、流石だなぁと勝手に感心する。



「良い天気だねー」

「朝強いんだな」

「ん、まぁね」



朝早くから仕事が入ることは結構あるから、寝起きはまぁまぁ良い方だと思う。この理由は宍戸君には言えないけど少し得意げな表情を浮かべてみせれば、その白い歯を出して笑ってくれた。



「宍戸君クマできてるよ?」

「あー、昨日ゲームやりすぎたんだよ」

「なーんだ、合宿が楽しみで仕方なくて眠れなかったのかと思った」

「ンなガキじゃねぇっつーの」



私のからかいにムキになった宍戸君がおかしくて笑ったら、不貞腐れたのか彼はそのままそっぽを向いてしまった。あれれ、子供扱いしすぎた?そう思い覗き込むようにして視線を合わせる。



「宍戸君?おーい?」

「うるせぇー」



おーい、おーい。何度声をかけても反応してくれないし、しまいには両手で耳を塞ぎ始めたから、私は思い切って身を乗り出してみた。すると鬱陶しげだった表情は一気に驚きに代わり、瞬時におでこに手を当てられ顔を離される。え、酷い!



「どうして顔掴むのー!」

「近いんだっつーの!」



本当にそんな理由なのかなぁ?まぁでも問い詰めたところで話してくれ無さそうだし、とりあえずは納得しとこう。

それから少しすると宍戸君も落ち着いて、私達はまた学校までの道のりを他愛もない話で埋めた。

校門前に着けば、既にほとんどが揃っていた。眠そうな人、意気込んでる人、いつも通りの人と、コンディションは様々だ。そして最後に樺地君がジローを担ぎながら登場し、これでようやく出発出来る状態になった。



「全員揃ったな」



バスに乗り込んでからは景吾が点呼をとる。全員いるのが確認され、いよいよ発進だ。



「泉先輩、俺の隣来ますよね?ですよね!?」

「Aー俺の隣来てよー」

「泉ートランプしよーぜ!」

「わ、私何処でも良いよ」



とりあえずは乗り込んだ順で適当に座っていたのだけれど、バスが発進するなり急に3人にそんなことを詰め寄られた。向日君の提案は素晴らしいと思うんだけど、鳳君とジローは正直そこまでこだわることじゃないでしょう、と心の中でツッコむ。



「席は流石にどこでもええやろ…ほんま成長しいひんなぁ」

「じゃあ俺も参戦してこようかな?」

「やめろ萩之介」

「ウス」



傍らで皆が話す声が聞こえ苦笑する。



「激ダサだな」

「朝顔真っ赤にして先輩と一緒に来たの誰でしたっけ?」

「黙れ!」



奥の方でも宍戸君と日吉君が何か話してたけど、流石にそれは聞こえなかった。とまぁこんな感じで適当にやり過ごしていると3人はおもむろにジャンケンをし始め、その結果、どうやら私の隣は鳳君になったみたい。

ずっと話しかけてくる鳳君と会話を交わしながら、これから先の道のりは長いなぁ、としみじみ思った。
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