明かされた素顔

「あ…」

「…どうぞ」



興味を持つなんて、絶対にあり得ないと思っていた。思っていたのに、一気にそれが湧き出て来たのを嫌でも感じた。



***



「跡部、泉は元気か?脚は相変わらず綺麗なん?」

「黙れ」

「泉は渡さないC!」

「お、俺だって渡しません!」



何なんだ揃いも揃って、と心の中で悪態を吐いてから騒ぎ続けるこの人達に視線を送る。

最近になって急に、泉という先輩の名前をよく耳にするようになった。正直興味なんて微塵も無かったが、あの跡部部長が気にかける位だ。しかも誰もがその先輩の話題になったら群がり、興味を示す。流石にそこまで周りが騒げば全く気にならないというのは嘘になるが、今の俺には調べるなんて余裕もなければ、調べてまで知ろうとも思わない。

一応チェックしてるのは、その聞いた限りではかなり地味であろう容姿だ。3年の階を通る時は結構意識してるが、実際に見つけたことはない。今時三つ編みに黒縁メガネ、丈が長すぎるほどのスカートを3年ではいてる奴なんて早々いないから、いたらそれこそ目立つにも関わらず、だ。



「(ガードされてるのか)」



恐らく跡部部長あたりが親衛隊から守っているんだろう。まぁどちらにせよ、そんな男に守られるだけのような女なのか。そう思うとまたしても一気に興味が無くなった俺は、いつのまにか容姿をチェックする事さえしなくなっていた。

だがそれから約1週間後にそれは起きた。…まさか素顔を知ってしまうなんて、思ってもいなかったのだ。
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