それから2週間後。



「あら、機嫌良いね」

「うんっ!」



今日は待ちに待った新連載の撮影日初日だ。そんなに顔に出ていたのかは自分では分からないけど、香月がわざわざ言ってきたという事は相当締まりの無い表情になっているんだろう。いけないいけない。いつかは香月にもこの喜び伝えるからね、と人知れず心の中で約束して、2人でトイレから教室に戻る。



「泉ー!これ新発売のムースポッキー!食べたEー!?」

「食べたーい!」

「落ち着けお前ら」



席に着くなりテンションが高い私達を見て、景吾は呆れたようにそう言った。やっぱりはしゃぎすぎ?でも、今日くらい許してよ。



「泉ー!」



その時、廊下の向こうから侑士が走ってきた。走る勢いは結構なもので、そのまま抱き着かれそうになる。



「テンションは高くても、危険信号はちゃんと発動してるのね」

「ごっごめん!つい反射的に」

「それが1番傷付くんやで」



だけどつい反射的に避けてしまったせいで、侑士は地面と熱いキスを交わすはめになってしまった。ご、ごめんなさい。

とまぁ色々あったけどそんなこんなで放課後になり、私は急ぎ足で撮影現場に向かった。



***



「よし、じゃあ街に繰り出そっか」

「はーい!…あの、何で制服なんですか?」



撮影所に着き、まず学校スタイルから抜け出して、いつものように緩い三つ編みを生かしたふわふわヘアにして。そしていざ出発、という時に私は改めて今回の衣装が何故制服なのかに疑問を持った(勿論氷帝のでは無い)。制服自体は確かに凄く可愛いけど、コンセプトが分からないのでは意味が無い。だから素直にアシスタントさんに聞いてみる。



「あぁ、今日はほら、Miuちゃんも今学校帰りだったろ?」

「はい」

「だから、制服の着こなしを主にチェックしていこうと思うんだ。Miuちゃんが可愛い、格好良いと思った着こなしの人を見つけたらすぐに言ってね」

「そういう事ですか、わかりました!」



するとそんな答えが返ってきて、なるほどなぁと1人で納得する。そうして次はスナップの説明を聞いて、それも聞き終えた後、いよいよスタジオから足を踏み出した。

バンに全員で乗り込んで駐車場に停め、少し歩いて街中まで出向く。この時間の渋谷、原宿は予想通り学校帰りの学生でごった返ししていて、ターゲットがいすぎるというのも苦労するんだなと初めて分かった。そうして目を凝らせながら歩く事数十分後、3人組の女の子に惹かれた私は彼女達を最初にスナップする事に決めた。



「見て下さい!オリジナル制服ですよー!それぞれ個性が出てて可愛いですね」



何でも私が言った言葉はそのまま雑誌に載せられるらしいから、感想もリポーターみたいに言わなきゃいけないらしい。ちょっと緊張、リポーターやったことないし…上手くできてるのかな。でも、そんな情けない不安は顔には出さない。



「次は…あっ、静森さん!」



ちなみに静森さんというのはアシスタントさんです。



「あの2人の男の子、かっこいいですよー!」

「おっ、本当だなー。Miuちゃん冴えてるね!」



私が指を差した男子高校生2人は着こなしも顔も格好良くて、周りのスタッフさん達も頷いて賛同してくれた。だから、早速その人達に駆け寄る。



「こんにちはー!今お時間大丈夫ですか?」

「え?何んすかこの感じ、俺達取材されてんの?」

「んがっ?…あぁああぁぁあっ!?Miuだー!!」

「えっ、え!?うわっ、ホントだ!マジ可愛いッスね!?」

「あっ、ありがとうございます」



クレープを頬張っていた2人組は急な事にかなり驚いてるみたいで、可愛いッスね!?と何故か疑問口調で言われて思わずタジタジになる。でもとりあえず、急にごめんなさい、という意も込めて軽く頭を下げ、肝心の撮影に協力してくれるかを訪ねる。すると2人は快くOKしてくれて、やった!と心の中でガッツポーズ。



「まずお名前と、差支えが無ければ高校の名前の頭文字を教えてください!」

「えっとー、R高校の切原赤也ッス!あ、17歳ッス」

「同じ高校で18歳の丸井ブン太!」

「赤也さんにブン太さんですね!じゃあ撮りますよー!」



カシャ、と音を立てて写ったカメラの中には、クレープを頬張りながらとても明るい笑顔でピースをする2人の姿が残された。赤也さんとブン太さんはそれぞれベージュ、茶色のカーディガンを着てて、ベルトも趣味が良いし、ズボンも下げすぎず上げすぎずの適度な感じで本当によく似合ってる。まさに今時の男子高校生だ。



「あのっ!握手してもらって良いッスか?」

「あっ、俺も!」

「全然良いですよー」



クレープを一足先に食べ終わった赤也さんに続き、ブン太さんにもそう言われ両手を差し出す。



「大人気だねーMiuちゃん。3人で1枚撮っとく?」

「良いんすか!?」

「それいいですね!2人共編集部に是非遊びに来てください。写真渡しますよ」



そんな提案をしてくれたカメラマンさんのお言葉に甘え、私達は3人で写真を撮る事になった。2人に挟まれた状態で軽くピースなんかしてみたりして、はいチーズ!という声と共にシャッター音が鳴り響く。きっと皆良い笑顔に違いない。



「俺もっとMiuちゃんの大ファンになりました!頑張って下さいッス!」

「絶対遊びに行くんで!」

「待ってますね」



そうして2人と別れ、私は再び撮影に取り掛かる為歩き出した。此処までの撮影は順調だし、まだまだ良いものが撮れそうだ。そう感じた私は再び意気込んで、辺りに視線を巡らせた。
 2/3 

bkm main home
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -