「あ゛ー疲れたー」

「俺も…ねむ……ぐぅ」

「ね、寝るの早い」

「いつもの事だ」

「芥川、私は景吾じゃない!」



体育が終わって教室に戻っている途中、ジローは香月と景吾を間違えたのか知らないけど、香月の肩に頭を乗せてそのまま寝てしまった。ちなみに香月の身長は174cmらしい。ゆえに、ジローからするとちょうど寄りかかりやすい位置に肩があるんだと思う。いいないいなー、スタイルも抜群だし、是非事務所に勧誘したいよ。



「コイツ、私早くご飯食べたいのに…!」

「それじゃあ私購買行ってくるよ」



ご飯が食べれなくてイラついている香月の様子を察して、私は購買に行く為に財布をジャージ入れから取り出した。で、私のその行動を見て景吾は少し不服そうに話しかけて来る。



「オイ、俺は行けるぜ」

「景吾がいたら目立つもん」



景吾(ジローもだけど)の人気はこの3日間でよーくわかった。だから転入早々2人で廊下を歩くなんてきっと自殺行為に値すると思うから、景吾には悪いけど1人で行かせてもらう。

ちなみに、香月もあれだけの美人だし人気には人気なんだけど、何ていうか怖がられてる感じがした。香月はクラスで私達3人以外に近寄ろうとしない。ちなみに景吾とは幼馴染で、ジローは景吾繋がりで仲良くなったとの事だ。それについて後から景吾から聞いた話だと、香月はずっと一匹狼だったらしい。理由は他人と関わるのは面倒だからとかなんとか。だから、私とこんな風に一緒にいる事自体が景吾から見ると珍しいって言ってた。それを聞くと特別な感じがして、嬉しくなる。

…って、話がズレた。



「じゃ、行ってくるね」



そうして未だ不服そうにしている景吾を横目に、私は教室を後にした。あ、ジロー香月の制服にヨダレ垂らしてる。

そうして購買に着くなり迎えた人混みをするりとすり抜けて、ちゃっかりパン売り場の先頭に立つ。



「えーっと…」



目の前にあるパンと睨めっこしつつ、そもそも景吾って購買のもの食べるのかなと思い苦笑する。食堂で食べる時だっていつも1番高いやつ頼んでるし、凄い曖昧なラインだ。それでもとりあえずクリームパン、メロンパン、オム焼きそばパン、などなど色々な物を手に取った。ちなみにジローには菓子パン中心だ。

一通り買い終えたから人混みを抜けて、いざ教室に戻ろうとしたその時。



「朝倉泉ちゃんやな?」

「…はい?」



悲劇はやってきた。



***



「おせぇ」

「確かに」

「同感だC」



泉が購買に行ってからかれこれ15分は経っているが、未だに彼女が帰ってくる気配は見られない。その遅さのせいで3人の顔からはひしひしと不安が感じ取れる。ちなみに芥川は先程目を覚ましたようだ。



「何かあったのかしら?」

「ファンクラブに絡まれてなけりゃいいが」

「あ、でもあの子見かけによらず足速いから。今日の体育で判明した」

「マジマジッ!?かっちょAー!」



泉の帰りを待っている3人の心情は様々だ。もっとも、その中で跡部は本気で彼女を心配していた。自分が誰よりも人気があるのは当たり前に自覚している為、ファンクラブ関係の心配事は中々絶えない。しかも泉は転入生だ、周りが出る杭は早めに打っておこうという判断を下したら、1人でいる今が絶好のチャンスとなる。そこまで考えて痺れを切らした跡部は、探しに行くか、と思い腰を椅子から浮かせた。



「か、香月ぃー…」



が、その時。か細く情けない声と共に、泉が帰ってきた。



「…ファンクラブより厄介なのに絡まれたわね、あの子」

「…テメェ」

「おおきにー」



語尾にハートマークをまき散らす、忍足も連れて。
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