変態にはご注意

「Miuマジで可愛いよねー」

「この可愛さは犯罪でしょ。ほんっと非の打ち所がない!」



授業合間の休み時間。クラスの女の子達が雑誌を見ながらそう話してるのを耳にし、心の中でひっそりとお礼を言う。私がモデルをしてる雑誌「MAGIC」は、嬉しいことに今高校生に読まれてる雑誌No.1らしい。だからこういう光景も予想していなかった訳ではないけれど、実際目の前でやられると少し恥ずかしい。



「やっぱりこの落ち着いた雰囲気がいいよねー。女らしいし!」

「うんうん、っていうかMiuおしゃれー」



でも、そんな恥じらいもその言葉によって一蹴された。女の子におしゃれと言われるもの程嬉しい事は無い。「MAGIC」は着るモデルによって系統は様々だけど、品を出すという事に関しては他のティーンズ雑誌に負けていないと思う。学生に優しい価格でいかに上品に見せるか、など学生ならではの特集を組んだりもしてる。



「相変わらず人気ねーあの雑誌」

「だってMiuちゃん超かわEもん!」

「うん、自然体で良いよね」



その時、購買から帰ってきた香月とジローが後ろから話しかけてきて、それに対しまた私は心の中でお礼を言う。んー、何か変な感じ。でも、“Miu”に対しての客観的な意見が間近で聞けるから、これはこれで良い機会なのかもしれない。



「ねー、あとべも思うでしょー?」



他にどんな意見があるのかなぁ、と密かに女の子達の会話に聞き耳を立てていると、ジローは景吾にも同意を求めた。景吾がこういうのに興味があるとは到底思えないけど、少し間を置きつつも頷いてくれたから安心。でも、その時に何故か私をチラ見してきたのには心臓がドキリと跳ねた。え、なんだろう、ちょっと怖い。



「あっ次体育だー」

「そういえばそうだ。泉、案内するよ」

「ありがとう!」

「じゃあな」



まぁ深く考えても仕方ないか。

とそこでジローの言葉で次は体育な事に気付き、私と香月は体育館にある更衣室に行く為、ジローと景吾は教室で着替える為、私達は二手に別れて解散した。



***



「こっちー!パスパス!」



どうやら今の時期女子はバレーをやってるみたいで、このクラスは体育系が多いのか皆張り切って授業に取り組んでいる。運動は別に嫌いじゃないから、気持ちよくアタックを決めている女の子達を見ると心なしか気分が盛り上がる。



「忍足覚悟ーっ!」

「何やねんジロ、グフッ」



ちなみに男子はバスケだ。授業は男女共に隣のクラスと合同で、ジローは大層無邪気な笑顔で多分ウチのクラスでは無い人に思いっきりボールをぶつけていた。哀れだなぁあの人。



「さーて次は私達よー!って、泉、長袖長ズボン?」

「あ、うん」



両肩をパン!と叩いてきた香月により、意識がまた引き戻される。やる気満々な香月は半袖短パンをさらに捲し立ててるけど、残念ながら私はそういう訳にはいかない。痣ついたら怒られちゃうしこれは仕方ないよなぁ、と思いながら、苦笑と共にそんな歯切れの悪い返事をした。



「うーん、残念」

「え?」

「朝倉ー!試合中は半袖短パンだぞー!」

「っていう事」



とそこで耳に入った先生の叫び声と香月の苦笑により、ピシッと体が石のように止まる。えぇ…ちょっと待って、聞いてないのに。

出来る事ならば本当に脱ぎたくないんだけど、どう足掻いても規則は規則だし香月も「さぁ脱ぐ脱ぐ!」と急かしてくる始末だし、仕方ないか。私は本当に渋々ジャージを脱いで、体育館の片隅にそれらを置いた。今私に犬耳があったら間違いなく垂れてるだろう。



「えらい綺麗な足やなぁ」



そんな予想外の規則のせいで項垂れていた私を、ある人が凝視していた事なんて、知る由もなかった。
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