「ちぇー、やっぱ跡部のクラスが1位だよなー」 閉会式帰りの廊下で、岳人は悔しそうに口を尖らせそう言った。式では部門ごとのランキング発表があったんやけど、大体の奴が狙っとる教室展示部門の1位は、今年も跡部のクラスで決まった。中高通して1位しか経験しとらんのがあいつらしいっちゅーか。 そうして今は後夜祭が行われる校庭に向かっとる。この人混みで全員と一緒に歩くのは無理やから、現地集合するぞっちゅーメールがさっき跡部から入った。気合充分やな。 「おいお前ら、こっち!」 校庭に着いても同じように人で溢れとって、宍戸の大声でそっちに足先を向ける。若干外れた大木の下には既に宍戸、滝、2年3人組がおって、残るはA組4人組だけ。あの4人が一緒におる所にはそら人も集まるやろうし、そりゃ遅くなってもしゃあないか。 「なんだか今年の学祭はいつもより賑やかですね!跡部部長が最後だからでしょうか?」 「あいつの事なら卒業してもなんやかんや援助してそうだけどな」 「うわっ、それ超言えてる!想像つくぜーあいつお節介だしな!」 本人がおらん所でギャーギャー岳人が笑っとると、不意に宍戸と滝が俺達の背後を見て「あ」。見んでも誰がおるか想像つくからそのまま放っておくと、ほんの数秒後には頭を抑えて痛い痛いと暴れとる岳人の姿が見られた。 「いってーよ!殴る事ねえだろ跡部!」 「笑われるのは癪に障るんだよ」 「だ、大丈夫?向日君」 案の定そこにはA組4人組がおって、俺達は跡部が生徒会室から持ってきた敷物を使いそこに腰を降ろした。此処からは校庭の様子が全部見渡せて、かつ人もあんまおらへんからまさにベストスポット。最初に場所取りをしてくれた滝には感謝せなあかんなぁー。 「なんかすっげー盛り上がってるC!何あれ出店!?」 「保護者の方々が有志で開いてくれてるそうだ。行きたいなら行って来い」 「そりゃ行くしかねぇだろ!行くぞジロー!」 「おー!」 「2人して転ばないで下さいよ」 そこで目ざとく出店がやっとるのを見つけた2人は、日吉にそんな注意をされながらも何も聞いとらん感じで走ってった。後輩に言われるてどないやねん、今に始まった事やないけど。ほんで残った俺達はいつも通り適当に喋りながら、校庭のド真ん中でやっとるキャンプファイアーをなんとなく見つめる。 「なんか今年のキャンプファイアー大きくなってない?」 「当たり前だろ、俺が氷帝にいる最後の年だ。例年と変わり映えしねぇなんて有り得ねぇ」 「本当絶対王政よね、あんた」 滝の言う通り、目の前の炎はただでさえでかかったちゅーのに更に磨きがかかっとった。その周りで音楽に合わせて踊っとる奴や、マジックまがいな事をしとる奴、公開告白をしとる奴など、全員が学祭の雰囲気に乗っかっとる。 「綺麗だねぇ。こんな豪華な学祭初めてだよ」 「ウチは特殊やからな」 「皆と過ごせて良かったー、氷帝で最初で最後の学祭」 すると隣に座っとる泉がそんな事を言い出して、賑やかなはずなのになんだかしんみりした雰囲気になっとる。まぁ、お祭り事の終盤はこんな感じやろ。 「じゃじゃーーん!こんなに買ってきちった!」 「ジローの奴俺に全部持たせてどんどん先に行くんだぜ!?」 そんな時にタイミングがええのか悪いのか、子供2人組が抱えきれん程の食べ物を買って戻って来た。雰囲気が雰囲気やっただけに俺達も笑うしかなくて、誰かがプッと噴出したのをきっかけにそれが蔓延する。 「なんでお前ら笑ってんだよ!?」 「まぁ皆幸せならそれでいいや〜」 「そういう問題か?」 当の本人達はまるでわかっとらんものの、それもまた俺達らしい。まだまだしんみりするには早いとでも言うかのようにどでかい花火が上がり始めて、柄にも合わずなんかええなぁ、とか思ったり。 「そうだね、幸せだね」 |