「失礼しま…って、何でこんな集まってるの?」 「もうじき泉が帰ってくるからな。何の用だ滝」 風呂上りに用事があって跡部の部屋に行くと、1階メンバーで泉の正体を知っている人達全員がそこにはいた。何事かと思って一瞬驚いたけど、どうやら全員でお迎えをするという名目らしい。相変わらずべったりだなぁ。 「廊下とか他の部屋も誰もいなかったけど?」 「寄せ付けないように言われとったけん」 「成程ね。あ、はい跡部。借りてた本」 理由がわかった所で、俺も最初の目的を果たそうと跡部に本を返す。 「少し遅くありませんか?」 「確かに、15分過ぎてるのぉ」 すると途端に日吉は時計を頻繁に確認しながらそう呟き、それに仁王も同意するように窓から身を乗り出した。千歳もその上から遠くを見るように首を伸ばし、そんな姿に苦笑しつつも俺も外を見る。 とそこでインサイトのポーズを取っていた跡部が、何やら不機嫌そうな声を上げた。それとほぼ同時に、目が悪い千歳と日吉以外、つまり俺と仁王の口からもあーあ、と溜息が出る。 「勢揃いやな」 「…ただいま」 それもそのはず、泉は白石と一緒に帰って来たんだから。 *** 「貴方っていう人は…!」 「ご、ごごごごめんなさいい」 白石さんの隣で身を縮こまらせている泉を見て、俺達4人は多分わざと大きく(少なくとも俺は故意的だ)溜息を吐いた。呆れたり、苦笑したりしている3人を押し抜けて、泉さんの目の前に立ちはだかる。 「何故そんなに無防備なんだ!」 「だ、だって」 「だってじゃない!」 「ごめんなさぃいいぃ」 「まぁまぁ、落ち着きんしゃい」 更を肩身を狭くした泉さんの両頬を抓ると、彼女は苦しそうに目に涙を溜めた。これくらいしないとこの人は反省しないと言うか、自覚をちゃんと持たない。だから止めて来た仁王さんそっちのけで説教を続ける。 「あと2日、絶対乗り切って下さい」 「たふん大丈夫れす」 「多分?」 「絶対でふ!!」 呂律が回っていないその姿を見て他の人は笑ったが、実際笑い事では無いのだ。たった1週間の合宿で何故こんなにもバレるのかを全力で問い質したい。しかし当の本人はわざとやっている訳ではないので(これが1番タチが悪いのだが)、それ以上は何も言えず俺はそっぽを向いた。 「まぁ、まだバレたのがお前で良かったぜ」 「そうだね。口外しなさそうだし」 「任せといてや」 部長と滝先輩の会話に、どうだか、と思いながら白石さんを見やる。他校のそこまで知らない先輩を簡単に信用出来るほど俺は甘ったれじゃない。 「ご迷惑かけました…」 これだから目が離せない、そう思うと同時に頭を軽く小突く。するとそのまま腰辺りに頭突きをしてきたので、それには思わず小さく笑ってしまった。 *** 「泉さんストレッチやりましょー!」 「うん、いいよ」 私は今の今まで、合宿というものをナメていた。 「やっぱ胸は大きくなくちゃ!」 「朋ちゃんは十分だよー」 「いや、目指すは泉さんよ!泉さん、触らせて下さい!」 「キャー朋に襲われたー」 そもそもそんなに接触する事も無いだろうと勝手に決めつけていたのが悪かったのだ。警戒心を持ち、無防備に過ごさない。これは絶対に忘れてはいけない。 後気が付いた事といえば、 「やっぱ学校が1番だ…」 「バストアッープ!」 明日は合宿最終日、これで私のマネージャー活動は終わる。最終日こそ何もありませんように、そんな切なる願いをしながら、2人と一緒にストレッチを続けた。あれ、太ったかな…。 |